トランジションとは
トランジションとは映像編集の技法の一つで、二つの映像のショットがある場合それらを繋ぎ合わせる方法を意味します。これは映像の世界だけでなく、音楽や様々な時間芸術に重要な概念です。以下で紹介する様々なトランジションの手法はそれぞれ異なる視覚的効果をもたらし、複数のショットの関係性を繋ぎ合わせる手助けをします。また音響と組み合せることでこれらの知覚的な効果は更に高められます。これらトランジションの技法をMax/MSP/Jitterのオブジェクトを使い再現する方法を紹介します。
Cut / カット
カットというトランジションの技法は二つの映像を即座に繋ぐ技法です。テレビや映画のシーンの中では最も多く使われるトランジションの技法であり、異なる時間、異なる場所、異なるショットで撮影したシーンを繋ぎ合わせ、シーン同士に時間的連続性をもたらします。
カットの効果的な利用法としてはClint Eastwood(クリントイーストウッド)監督のPer Qualche Dollaro In Piu(夕陽のガンマン)があげられます。この映画ではストーリーの緊迫に合わせてカットのペースを早めて行き、視聴者に緊張を与える効果をサポートしています。
夕陽のガンマン アルティメット・エディション [DVD] エンニオ・モリコーネ 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2007-02-02 |
Wipe / ワイプ
ワイプとはあるショットが前のショットに向かって前進していき映像が取って代わるような編集のことを指します。この場合の飛び込んでくる映像のエッジの形は直線的であったり、幾何学的な形をしていたり様々なバリエーションがあります。ワイプは特に場面変化や視点の変化などを明確に示すために用いられ、しばしば映像のエッジに色を乗せたりすることがあります。
ワイプの効果的な使用法というと
George Lucas(ジョージ・ルーカス)のStarwars(スターウォーズ) シリーズや黒澤明の隠し砦の三悪人が挙げられます。
最も初期のワイプを使用した作品は、George Albert Smith監督の1903年の短編映画 "Mary Jane’s Mishap" と言われています。
隠し砦の三悪人 [DVD]
東宝 2003-03-21 |
スターウォーズ Prequel Trilogy [DVD]
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン 2008-12-17 |
Fade / フェード
フェードとはある映像をだんだんとなだらかにある単色に変化させる編集を意味します。映像だけでなくオーディオのミキシングなどでも頻繁に用いられる技法です。
映画やテレビの編集で最も良く使われるフェードはfade to blackとfade to whiteです。文字通り映像がなだらかに単色の黒か白の画面に変化します。これはシーンの開始点や終止点を示すためにも使われる技法です。この場合どれくらいの単位時間を利用して映像を変化させるかが重要になってきます。長い時間をかけたフェードイン、フェードアウトは作品の始まりと終わりを感じさせるために用いられ、短いフェードは場面から場面に移り変わる際に時間がいくらか経過したような心理効果をもたらします。
これとは別の効果としてクロスフェードという編集があります。クロスフェードはショットを単色に変化させるのではなく別のショットになだらかに変化させます。これは一方の映像がフェードアウトするのと同じペースで新しい映像がフェードインすることでもたらされる効果です。
トランジションの使用法
トランジションは複数の映像を効果的に繋ぐ一方、派手な動きのワイプや、頻繁にシーンが変更されると映像のストーリーの自然な流れを遮る程目立ってしまうため、どのような場面で使用するのかを熟考する必要があります。これは映像作品だけでなく、プレゼンテーション時のパワーポイントやキーノートといったソフトのスライド切り替え時にも言えることです。
演劇や舞台芸術の場合も照明や幕を使って場面と場面を繋ぎ合わせることはしばしば行われます。
トランジションによってシーンを繋ぐ場合、本当に映像処理が必要なのか、どのような心理的効果を目指すのか、流れを遮っていないかなどに注意を払いましょう。本来のストーリーとはミスマッチなトランジションを選択すると視聴者はかえって混乱してしまいます。
Max/MSP/Jitterパッチ
上記のサンプル映像で使用したMaxパッチは下記からダウンロード可能です。
デモ映像を見てお分かりのように、Max/MSP/Jitterではトランジションに関する複雑なアルゴリズムを組む必要はありません。jit.qt.effectというオブジェクトが様々な種類のトランジションを実行してくれます。fadeはやや複雑になりますが、openGLを使い実行するのが最も単純なアプローチと思われます。jit.qt.effectにはここで紹介した以外にもアップルのクイックタイムの映像処理で行うことが可能な様々なエフェクトが備わっているので、簡単な処理を必要とする場合におすすめです。