新しい複雑性(New Complexity)とは、イギリスの現代音楽の作曲家であるブライアン ファーニホウ、マイケル フィニッスィーの複雑怪奇な楽譜面を指して名が付けられたものです。しかしその演奏や鑑賞の困難さはグレゴリオ聖歌の時代から続く西洋音楽史上最も大きな問題の一つとなっています。日本では現在も「新しい複雑性」全体の紹介は進んでおらず、ソロ作品こそ演奏の機会はあるもののアンサンブル作品の演奏の実現にはまだまだ時間が必要と思われます。
その複雑な楽譜はこちらでも確認ができます。
彼らの音楽の特徴として音符を分割していき、リズムを複雑化させるような技法があります。IrcamのPatchwork、Openmusicを利用することでこの技法は飛躍的に効率化することが可能です。
Openmusic
このソフトはLispベースのオブジェクト指向プログラミング環境であり、コンピュータ支援作曲法(computer-assisted composition)のためのソフトです。このソフトを利用している代表的な作曲家はBrian Ferneyhough(ブライアン ファーニホウ)Philippe Manoury(フィリップ マヌリ)Tristan Murail(トリスタン ミュライユ)Kaija Saariaho(カイヤ サーリアホ)らです。
入手先
リズムの細分化、分割
上の画像はOpenmusicを用いて作成したパッチで、音符の分割を計算するアルゴリズムになっています。分割のためのパラメータは最上部om-randomオブジェクトに接続された数値で行います。画像では左から順にすべて1という数値が代入されています。このパッチが生成するリズムは以下のようなタイミング、デュレーションが均一のリズムになります。
音源
次の画像のパッチではリズムの最大分割数に変化があります。最上部の4つの数値のパラメータで一番右端の数に注目してください。先ほどまで1が代入されていたところが2に変わっています。このパッチでは、2分音符1つが入る節のスペースに最大で2つの音符を挿入する場合があり、それらはランダムに選ばれるようなアルゴリズムになっています。2,3,5,6,7小節目では4分音符2つのリズムが選択されています。
音源
次の画像では少し複雑になり、最大で一小節が三分割されるようなパラメータになっています。
音源
次の画像では更に分割数は複雑になり、0から8分割までをランダムに選択するパラメータになります。5連符や7連符などがランダムに組み合わさり、リズムの緊張度が増します。この時点ですでにかなりイレギュラーなリズムになっていますが、一小節の範囲内だけで分析すると全ての音符が同じ音価をもっていることに気づきます。これはとても退屈なリズムであり、少し聴けば先の予想がついてしまう単純さを含んでいます。
音源
次の画像では最上部右から3番目のパラメータに2という数値が代入されています。この部分は音価をコントロールするアルゴリズムで、2という数値を代入することによってランダムに2倍の音価が出現するような仕組みになっています。音源の通りかなり複雑なリズムを自動生成することに成功しています。
音源
最後の画像は数値を微調整し、分割数と音価をランダムに選択したものです。あとはこの仕組みをどのように自分の作品に生かしていくのかは作曲家によって大きく異なってきます。
音源
Ircam Openmusic New complexityに関する参考文献/音源