1722年のジャン・フィリップ・ラモー(Jean-Philippe Rameau)が発表した和声論( Treatise on Harmony)以来、クラシックの古典派、ロマン派の作曲家に親しまれた調性和声は、現在ではジャズやポピュラー音楽のコード理論として姿を変えて、我々の耳に最もなじみのある音楽様式となりました。
ポピュラー音楽における音楽理論という用語はほぼ全ての場合で調性和声の理論のことをさします。このことからも、調性和声は人類史上最も市民権を得ている音楽理論と呼ぶことができるでしょう。
ここでは長調短調によるカデンツの原理と、調性音楽の自動生成プログラミングを解説します。
調性和声とは
調性音楽とは器楽法が発展し、ポリフォニックな音楽表現からホモフォニックな音楽へ時代の流れがシフトした1750年頃から1900年頃までのヨーロッパの様式のことです。そこで使われていた長音階、短音階による和声法が調性和声、機能和声と呼ばれます。これは和音に機能性を持たせ、緊張と弛緩を作り出すための理論であり、過去の時代の複雑に入り組んだポリフォニックな作法よりも容易に安定した響きと不安定な響きを作り出す事が可能な理論です。
T – S – D 和声の機能
Tonic -Subdominant -Dominantの和声進行は調性音楽の重要な概念の一つです。これらは三和音の根音によってT,S,Dの三種類の和声に区分されます。
Tonic トニック
Iの和音、viの和音、(iiiの和音)
- Iの後続にはIVかVの和音が最も多く表れ、その次に多いのがviへの進行。稀にiiかiiiに進行します。
- viの後続にはiiかVの和音が最も多く表れ、その次に多いのがiiiかIVへの進行。稀にIに進行します。
- iiiの後はVIの和音が最も多く表れ、その次に多いのがIVへの進行。稀にI, ii, Vに進行します。
Subdominant サブドミナント
iiの和音、IVの和音
- iiの後続にはVの和音が最も多く表れ、その次に多いのがIVかviへの進行。稀にIかiiiに進行します。
- IVの後続にはVの和音が最も多く表れ、その次に多いのがIかiiへの進行。稀にviかiiiに進行します。
Dominant ドミナント
Vの和音、viiの和音
- Vの後続にはIの和音が最も多く表れ、その次に多いのがIVかivへの進行。稀にiiかiiiに進行します。
- viiの後続にはIかiiiの和音が最も多く表れ、その次に多いのがviへの進行。稀にiiかIVかVに進行します。
転回形
音楽理論と作曲法の違い
音楽理論というものは、過去の作曲家の実践の積み重ねの集合であり、作曲家は音楽理論に基づいて音楽を作っている訳ではない点に注意しなければなりません。これは作曲家の過去の慣習を学ぶものであって、未来の作曲を保証するためのものではありません。しかし音楽理論の勉強をしなければ音楽の本質を掴むことは難しく、たちまち壁にぶつかるでしょう。音楽理論の学習は作曲家にとっては必須とも言えますが、理論を習得して理論通りに曲を書きさえすれば、それが音楽の普遍的な法則として正統化されるというものではないということを意識する必要があります。理論はあくまで過去の時代の作法です。未来の事は我々にはわかりません。
Max/MSPによる調性音楽の自動生成
Max/MSPパッチのダウンロード
TonalHarmony.mxf.zip (for Max5.x)
max5Runtime(上記のMaxパッチの実行用フリーソフトウェア for Mac)
max5Runtime(上記のMaxパッチの実行用フリーソフトウェア for win)