和声の教科書

音大生、芸大生、そして音楽を志すみなさん、和声の学習はどのテキストを使って勉強したでしょうか。

和声とは調性音楽の作法を学ぶための学問です。調性音楽とはクラシックの時代(18-19世紀)と現代のポピュラー音楽の様式なので、世の中の音楽のほとんどが調性かその亜種と考えられるため、和声学を学ぶだけでも多くの音楽の理解、作曲に役立つでしょう。

私はいわゆる芸大和声和声―理論と実習 (1)
を利用して4声体のハーモナイズを勉強しました。

他にも土居先生のテキストや谷本先生のオリジナルプリントは使用して、作曲初心者であった私の初歩ステージの理解には大変役立ちましたが、本当の意味で身に付いていったのは芸大和声を使って高岡先生の個人レッスンで和声を見てもらってからであったと思います。

振り返ると、大学一年時に谷本先生、布川先生、土居先生と3人もの先生から和声を教わり、その後は高岡先生に教わりましたが先生によって正解に差がでます。

これが調性和声という時代様式の下のレイヤーにある個人様式なんですね。

中でも高岡先生の和声は難易度が高く、禁則を破らなくても響きがおかしいと指摘されたことが何度かありました。反対に、芸大の教科書では禁じられているけど例外的に認められる進行もあったりして、指導者無くして独学で学ぶ事は不可能だなと和声学の深さを感じました。和声は勉強し続けていないと忘れてしまうことを肝に命じておく必要もあります。

私が学生の頃の高岡先生の和声の授業は、最初のセメスターで転調を含む分析課題もやりましたしバッハの平均律はシェンカー理論的にハイパーメジャーを用いて説明したりしていました。

私は単位取得後も4年時に聴講したので楽しめましたが1年生だったらついていけなかったかもしれないです。和声がわからないと悩んでいた後輩が沢山いました。

楽器の訓練と同様沢山課題を毎日解いていかないと実力は身に付きません。授業に出ているだけで習得できるようなものではないので、日々自習をし、わからない部分を授業で明らかにするというサイクルが一番和声の勉強に向いていると思います。

和声に限らず、どんな学問もそうかもしれませんが、教科書読めば解決するような問題にレッスンや授業の時間を割くのではなく、教科書を読んでもどうしてもわからない部分の質問に時間を割いたほうが圧倒的に伸びます。

日本の学生は脱マニュアル本指向があるのか、理論書や専門書を読まなすぎるのですがこれは学問を志す身としては恥ずかしい事だと思って沢山本を読んだほうがいいと思います。

学業とは天から降ってくるものではなくて、自分でつかみ取らなければならないので、能動的に授業に望むのが成功への近道であると思います。

話は反れましたが、その後は英語の勉強もかねてTonal Harmony With an Introduction to Twentieth-Century Music
を使って1から和声の復習も行いました。

芸大の和声の本とは違い、譜例は実際の音楽作品を使っていますし、ターゲットも初心者から中、上級者まで幅広いと感じました。

4声体の課題のようなものはほとんどなく、分析課題が多いですが、実際の作曲に応用しやすい作り方であると思います。非常に分厚い本なので読み応えがあります。後半はドビュッシー、ストラヴィンスキーからスティーブライヒやペンデレツキなど20世紀の和声まで触れられているので、21世紀を生きる作曲家には役立つと思います。

芸大和声はあれはあれで、ハノンのように機械的に合理的にハーモナイズ能力を訓練できるので決して悪い教科書ではありません。事実、あの教科書で訓練を積んだ学生のほうがコンセルバトワールの受験には有利だそうです。

最も最近手に入れた和声のテキストはピストンの和声の教科書の日本語版ピストン/デヴォート和声法―分析と実習
です。これもアメリカでは広く使われているテキストですが、今ではIと解釈する和音がIIIとして説明されていたり、解釈がやや古いそうです。初版も芸大和声よりは古いものです。音楽理論の研究は日進月歩で進化しているので、教科書もそれに合わせて新しく改訂されていくのが望ましいと思います。

しかしながら、各和音の使い方などは丁寧に説明されており、作曲家なら引き出しが増えると思います。

芸大和声に慣れすぎている人には、アメリカの教科書はV9の根音省略形がvii7として説明されていたり、転回形を表す数字が通奏低音の書き方だったりするので、戸惑うかもしれませんが、ある段階に達すると芸大式の表記だけでは説明が出来ない音などが出てくるため、通奏低音の書き方を覚える事をおすすめいたします。

芸大式の表記は日本以外の国ではいっさい通用しないという理由で、うちの大学の授業でも使用していません。

和声―理論と実習 (1)
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