ポスト調性音楽、ピッチクラスセット理論による楽曲分析の世界

投稿日: カテゴリー: 芸術・美学

芸大に行ってからやけにアメリカの音楽理論について質問を受ける機会が増えました。
具体的にはシェンカー分析とピッチクラスセット理論という楽曲分析の理論についてです。シェンカーはドイツ人ですが、理論自体はアメリカで火を噴いたので、ヨーロッパの理論というより実質アメリカの理論と考えてもいいと思います。

2010年現在の音楽理論の研究でアメリカは最も盛んな国の一つで、世界の先端をリードしていると言っても過言ではなく、ヨーロッパの研究者も皆アメリカの論文のチェックには目を光らせているようです。

このピッチクラスセット理論の文献についての質問を受けることが多いので、この分野の代表的な本を紹介します。
ピッチクラスセット理論についての一般的な説明は英語版のwikipediaをご参照ください。
http://en.wikipedia.org/wiki/Set_theory_%28music%29

まずは、本家Allen Forteの一冊。
セットクラスのネーミング、forte nameは彼の名前に由来しています。中身は無調音楽の構造分析。forte nameに慣れていない人にとって記述と音の響きが一致せず、やや難しいかもしれませんが、文脈理解の基礎としておさえておくべき一冊だと思われます。

The Structure of Atonal Music The Structure of Atonal Music

Yale University Press 1977-09-10
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次に、80年代から北米の音楽理論教育で最も広く使われているであろうピッチクラスの教科書、Basic Atonal Theory。
ピッチクラスセット理論の基礎的な概念から記号の使いかた、ウェーベルンやシェーンベルクの実際の分析などが紹介されていて、この道の研究者は必ず持っている一冊です。
用語や記号の使いかたなどはこの本を参考にすることが多いです。

Basic Atonal Theory Basic Atonal Theory

Schirmer Books 1980-12
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そして、これは私は個人的に最もおすすめする教科書、Introduction to Post-Tonal Theory。

ポスト調性音楽の代表的な作曲家の分析を通じて、ピッチクラスセット理論を概観します。
ピッチクラスだけでなく、ストラヴィンスキーやライヒのダイアトニックコレクションを用いた音高操作の分析、バルトークの対称軸、ストラヴィンスキーのローテーションアレイ、12音技法など調性音楽以降に出て来た新しい技法が解説されており、英語も三冊中最もわかりやすいです。

Introduction to Post-Tonal Theory (3rd Edition) Introduction to Post-Tonal Theory (3rd Edition)

Prentice Hall 2004-08-28
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調性音楽という過去の時代の大きな潮流を乗り越え、新しい様式を模索している作曲家や20世紀の音楽を研究している音楽理論家には、ピッチクラスセットという概念は大きく役に立つでしょう。

和音や旋律など縦横の関係を取りはらい、集合として音楽をとらえていく考え方は私自身も大きな影響を受けており、クセナキス、ストラヴィンスキーのペトルーシュカのようなの確率的な集合の推移はコンピュータ時代に再考すべき作曲理論であると思います。