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スタジオヘッドフォン SONY MDR-Z1000 の海外版 MDR-7520の音

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SONYのスタジオモニターヘッドフォンのフラッグシップモデルとして2010年に登場したMDR-Z1000の海外版モデルとしてMDR-7520というモデルがあります。

MDR-7520(Z1000)の仕様

型式:密閉ダイナミック型(耳覆い型)
ドライバーユニット:50mm、ドーム型(HD、OFCボイスコイル)
感度:108dB/mW
再生周波数帯域:5-80,000Hz
インピーダンス:24Ω
最大入力:4,000mW
コード長(Z1000):約3m/1.2m 7N-OFCリッツ線(着脱式)
入力プラグ(Z1000):金メッキL型ステレオミニプラグ(1.2mコード)、 金メッキステレオミニプラグ(3mコード)
質量:約270g

Z1000は1.2mと3mのコードが付くのに対して7520はカールコードが一本だけ付属します。

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Z1000とスペック上はほぼ同じですが、Z1000は赤いラベルがついているのに対して青いラベルでfor Professionalと書かれています。
MDR-7520(Z1000)はスタジオ用モニターヘッドフォンなのですが、昨今のポータブルオーディオやPCオーディオでのリスニングユーザーもターゲットの視野に入れた製品と思われます。
実際にプロがスタジオで使用していると銘打たれると売り上げに影響するそうですが、このヘッドフォンが使われている現場には遭遇したことがありませんが、マスタリングにはちょくちょく使われているようです。

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MDR-7520のコードは着脱式であるため、経年劣化でケーブルが断線しても半田無しですぐに交換することが可能です。CD900STもコードを交換できますが、半田作業は必要です。
こういった消耗品が簡単に交換できるかという部分はスタジオ機材では重要です。
ヘッドフォンやイヤフォンの故障で一番多いのがケーブルの断線だと思います。

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いつまでも廃盤にならず、交換パーツが入手可能であることでCD900STは未だにレコーディングスタジオの標準機材として君臨しています。
Z1000も品質が高く、スタジオモニターヘッドフォンとして十分に機能しますが、いつリニューアルされてパーツが入手困難になってしまうのか不透明な点もあり、実際にスタジオで使われている例はあまり多くは無いのが実情です。
交換パーツとしてもあまりリストが無く、イヤーパッドは片方で4000円程度と高価です。
http://www.e-earphone.jp/shopdetail/003029000043/brandname/

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CD900STがあまりにスタンダードで長年使用されてきたため、エンジニアは簡単にヘッドフォンを変えてしまうと音作りが難しくなってしまう問題もあります。音質の善し悪しではなく、この機材の音を基準に考え、他のスピーカーで鳴らしたときの音響を想像しながらエンジニアは音を作ります。
そういった、リファレンス用のモニターとしてCD900STはフラットでクセが無く非常に評価が高いです。
しかし、デジタル音源黎明期の80年代に登場したCD900STは昨今のハイレゾリューション音源の再生には高周波の特性はぎりぎりであり、次世代のモニターヘッドフォンの登場が望まれています。

MDR-7520

イヤーパッドの周りは革製で、ドライバーの中心部分は7520のほうが薄いメッシュのような素材になっており、ドライバーがむき出しに近くなっています。
このあたりの細かな使用の違いは、同じSONYのスタジオモニターヘッドフォン、MDR-CD900STと海外バージョンのMDR-7506の関係に似ています。

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ハウジングにはマグネシウム合金が使われていて、見た目の割に非常に軽いボディーになっています。アーム部分の色はZ1000はシルバーなのに対して、7520はブラックです。

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遮音性はCD900STよりも高く耳にフィットする感触はあります。しかし、ドライバー自体の物理的距離は耳からやや離れてしまいます。このことが音に対して大きな影響を与えることはヘッドフォンを耳に押し付けた経験がある人なら誰でも想像ができると思います。

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サウンド面ではスタジオモニターとはいえ、CD900STとは大きな違いがあります。
CD900STは再生可能周波数の上限が30KHzなので、耳で音として知覚できるかは別として、理論上はハイレゾリューション音源超高域の忠実な再生はやや限度があります。
MDR-7520(Z1000)では液晶ポリマーフィルム振動板という新素材が使われており、周波数は5Hzから80KHzまで対応しており、44.1KHzのCDクオリティーを上回る96KHzやDSDといったハイレゾリューション音源のファイル再生時に真価を発揮します。

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イメージで言うと、CD900STが楽器やスピーカーに思いっきり近づいてデッドな状態でバツバツ耳元で音が鳴るような感じに対して、MDR-7520(Z1000)は一歩下がった距離から音の全体像を捉えたような感じがします。
音質としてはGenelecのモニタースピーカーの音を聴いているようなハイファイでキレイな感触です。
CD900STはヘッドフォンでしか聴き取れないようなノイズの確認や音のディテールを作り込むために利用されますが、MDR-7520(Z1000)はスピーカーで聴く自然な音に近くなっているので、CD900STでしかできなかった作業の一部はMDR-7520(Z1000)では難しくなるかもしれません。これは音質や品質の問題ではなく、ヘッドフォンが目指す方向が異なるため同じ用途の代替にならないということです。

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解像度という言葉でヘッドフォンのクオリティーは評価されたりしますが、超高域の複雑な波形の再現に関してはMDR-7520(Z1000)が自然に聞こえ一歩リードしているように感じます。

ただし、耳元でくっきり音が聴こえるような感覚はCD900STのほうが上なので、そういった音の鳴りかたに解像度を感じる人にはMDR-7520(Z1000)はおとなしいと感じるかもしれません。
破擦音の刺さるような響きもCD900STのほうがあるため、こういった音域での波形編集等はCD900STのほうが強いでしょう。

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空間性に関してはMDR-7520(Z1000)のほうが一歩リードといった感じです。CD900STはむしろ、原音以上に空間性をとっぱらってくっきり音が聴こえるようなところがあるのですが、MDR-7520(Z1000)は少し弾いた位置から音を捉えているような感じであり、空間表現はうまいです。ドラムの胴鳴りの残響感などをきっちり作り込むにはMDR-7520(Z1000)は良いと思います。

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MDR-7520(Z1000)はモニターなので、当然地を這うような重低音は出ません。
例えば、モンスターケーブルのヘッドフォンなどは強烈な重低音が出るのですが、重低音と高域を共存させるのはドライバーが一つしか無いヘッドフォンやイヤフォンでは難しいのか、多くの場合高域がマスキングされ、こもったように聴こえてしまいます。なので、多くのモニターヘッドフォンでは低音が控えめになっています。しかしMDR-7520(Z1000)は非常にタイトにしっかり低音が出ます。
TR808のキックが連打されても、高域は影響を受けずに聴き取ることができます。けっしてDJヘッドフォンのように低音は分厚くは無いのですが、かなり低い低周波まできっちり再生されます。CD900STは低域は弱いため低域中心に音づくりをする場合はMDR-7520(Z1000)も十分有りでしょう。

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リスニング用ヘッドフォンというのは既に作られた音源を自分の主観で好きなように補正して楽しむものですが、モニターヘッドフォンは客観的にサウンドを把握し、自分の好みにするためには原音のほうを作りこんでいく作り手のために使われるので、フラットな性能であることは重要です。ここで癖がついていると、音源をどういじっていいのかわからなくなります。
昨今ではPCオーディオ、ピュアオーディオの分野でもRMEのオーディオインターフェイスのように、クセが少ないフラットで高性能な特性の機材にも注目が集まっているようです。

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MDR-7520(Z1000)はソニーの開発者が言うように、マスタリングスタジオで開発が進められたため、レコーディングブースでのミュージシャンのモニター用途とは違う使われかたになるヘッドフォンでしょう。
音というより、音楽の全体像をモニタリングするのに向いており、細かい音色作りというよりは、ミックスやマスタリング、リスニング用途に良いのではないかと感じます。
ただし、雑音の多い屋外でのリスニングだとそもそもモニターヘッドフォンの想定している環境と大きく異なるため、雑音によって低音がかき消されることがあります。
雑踏でも音楽鑑賞をしたいならおとなしくリスニング用ヘッドフォンやインナーイヤータイプのイアフォンのほうがいいかもしれません。

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MDR-7520(Z1000)はCD900STのリニューアルになるようなものではなく、用途からして完全に棲み分けられるスタジオモニターヘッドフォンです。

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