SONY NEXとオールドレンズ


DSC05921
(NEX5N / Leica Summar 50mm f2 @新潟:水と土の芸術祭)

SONYの最新のミラーレス一眼レフカメラNEXシリーズとオールドレンズは実は相性が良いです。

オールドレンズとはヴィンテージギターやヴィンテージシンセと同じような世界で、現行の最新のレンズもいいけど、マルチコーティングされていないマニュアルフォーカスの時代のレンズの自然な発色、コントラスト、収差が多いレンズの歪曲などを活かして、現実をありのままに記録していくような現代レンズの方向とは逆に、味のある表現を作ってしまおうという昨今のブームです。

_DSC0142
20120810-_DSC1608
20120521DSC02176
(NEX5N / SONY SEL16F28 16mm f4.5)

現行のレンズはSONYのSEL16F28のように、かっちりしていて、とにかくコントラストが強く線はくっきり、発色も派手め。
人間でもよっぽど視力が良い人でないかぎりこんなふうに世界は見えてないと思うのですが…

もっとも、アンドレアス・グルスキーのように精密なミクロの描写で全体を構成するようなアプローチはより高画質な現代的なカメラ、レンズを使用したほうがいいと思うので、一概にオールドが絶対といったものでは無いと思います。適材適所。
よく言われていることですが、SEL16F28はあまり解像力は無いように思います。

現行のレンズは全般的にアドビのイラストレーターで作ったような鮮やかなグラフィックスのようなシャープでビビッドな写りの方向性です。
デジタルカメラ、ケータイのカメラ機能の画素数競争や収差を押さえ込む設計が行き着く先はこういう半人工的なイメージなんだと思います。
そういったイメージを具体化するために使うのはおおいに有りだと思います。
普通に記録写真や集合写真を撮影するには高解像度で繊細で現代的な画質が求められるでしょう。

20120903-_DSC4379
SONY MDR-CD900ST
DSC00911-1
DSC08690-1
(NEX5N / Leica Summar 50mm f2)

対して、オールドレンズは総じて写りがソフトです。コントラストも淡いのですが何とも言えない味やコクのようなものがあります。
上のズマールは1937年製でまだモノクロカメラの時代のレンズです。そんなレンズでもNEXではマウントアダプタさえ中継させれば簡単に撮影ができます。
ズマールの開放では光源の状態によってはグルグルボケが発生して、色合いも渋いです。昭和の色です。
先端のテクノロジーでの光学的な設計の面でも、化学的なレンズコーティングの面でも洗練された現代のレンズではこのような写りを生み出すのは逆に難しいです。
RAWで撮影して調整するにしても、ボケかたや色のバランスなど調整できることに限度があります。
そこで、オールドに走ると。
レンズのクセや弱点を積極的に利用して、作品の波長に合わせて強調してしまうのです。

現代のレンズは収差を無くすという意味では、各社同じゴールを目指しているため、メーカーごとの差はどんどん縮まっていて、結果的に個性は失われつつあるように感じます。
カメラを買うと付属で付いてくるキットレンズは皆大差無いと思います。

対してオールドレンズというのは、単に古いというだけでなく、クセが強いものが多いです。レンズごとにかなりキャラクターがあります。現代のレンズもこれくらい個性があるなら、コレクターを除いて誰もオールドに走ることは無いと思うのですが、そうではないので個性を求めてオールドレンズを探求するというのはあると思います。

20120801-_DSC9938
20121010-_DSC6606
_DSC6763-1
(NEX5N / Carl Zeiss Flektogon 25mm F4)

上のフレクトゴンで撮影した写真のように強い光源の光が周囲ににじみ出てしまう感じなどはむしろ感覚的に受け入れられるのではないでしょうか。
これは通称ハロ、ハレーションと呼ばれる現象で、レンズはこういった現実には起きていない光のにじみなどを抑えるためにレンズコーティングの技術を発展させているため、現在はオールドレンズでなければこのような描写は不可能になっています。
しかし、我々の知覚に近いのは必ずしも高性能で現実の世界でおきている現象に忠実なレンズの眼では無いはずです。
現実に忠実であるということは、ものづくりの唯一の答えではないはずです。

DSC08183-1
DSC07927-1
DSC08146-1
(NEX5N / Canon 35mmF1.8)

オールドレンズは今はまだ値段も単なる中古の価格で扱われていますが、今後増えることが無いものなので、音楽のヴィンテージ機材同様、希少価値により価格が高騰していくことも考えられます。
2012年現在はライカのズマールのようなバルナックレンズなんて、1930年代のものが1万円台で購入できたりするのですが、いつまでもこれが続くとは思えません。

現在市場の価格の割りにとても素晴らしい写りをするのがContax Gマウント用のCarl Zeissレンズです。

関連記事:
SONY NEXユーザーにおすすめのCONTAX Gマウント ZEISSレンズ
http://akihikomatsumoto.com/blog/?p=899

これは1990年代の製品なのでオールドレンズというより、格安高性能現代レンズという感じです。
しかも、ミラーレスカメラにぴったりのコンパクトなサイズ。
レンズの設計自体もBiogon28mmなどはミラー付きの一眼では不可能なレンズ設計になっています。

DSC01812-1
DSC01292-1
ストラトキャスター / Stratocaster 1977
DSC00628-1
DSC04936-1
(NEX5N / Carl Zeiss Biogon T* 28mm F2.8)

Biogonの描写はとにかくシャープ。
この解像度は最近のレンズでも高級機種でしか出せないレベルです。いくらボディーで解像度が高くてもレンズが悪ければ低解像度で撮影しているのと変わりません。
広角レンズだとNEXのキットレンズの16mm単焦点やズーム18-55mmがありますが、線の細かさと階調がBiogonは全く違います。
キットレンズは線が太めではっきりしているのですが、細かい部分はつぶれてしまい、陰になっている暗い階調の部分が一気に真っ黒になってしまうのですが、Biogonだと線が細くて鮮明で、陰の部分の階調がきっちり生きていてディテールが繊細です。
Gレンズは総じていい意味で値段不相応の写りになります。10-20万クラスのレンズと変わらないです。しかもレンズが小さくてミラーレス向き!

DSC02620-1
DSC03823-1
DSC01316-1
DSC04820-1
DSC07916-1
(NEX5N / Carl Zeiss Sonnar T* 90mm F2.8)

Sonnar 90mmも1万円台で買えるわりに面白い描写です。
ゾナーはF2.8で撮影するととても被写界深度が狭くなります。
かなりシビアなピント調整が必要になりますが、その分ピントの範囲から外れた部分がいきなりボケるので被写体が際立ちます。プラナーよりゾナーのほうが画像がくっきりシャープになります。

DSC02058-1
DSC02473-1
DSC00897-1
DSC08439-1
(NEX5N / Carl Zeiss Planar T* 45mm F2)

Planar 45mmは独特の透明感があります。
ボケかたが滑らかできれいなのですが、ピントが合っている部分はシャキっとします。
ゾナーよりプラナーのほうが柔らかい画像になります。
標準レンズのほとんどがプラナーの影響を受けているだけあって、お手本のような写りです。

ミラーレスの登場まではフランジバックと呼ばれるレンズとフィルムまたはセンサーの距離の関係で、古いレンズを搭載できる一眼レフカメラ機種は限られていたので、死蔵されていた規格のレンズがかなりあるのですが、ミラーレス、特にSONYのNEXはフランジバックがかなり短く、マウントアダプターさえ経由すれば、NEXに搭載できないレンズ規格はほとんど無いと言っても過言ではありません。
これもミラーが付いていない設計のおかげです。
とにかくNEXのEマウントよりもフランジバックが長いぶんにはマウントアダプターの筒を稼げば規格通りの長さまで稼げるんです。

ーフランジバックの長さ比較ー

NEX E Mount 18.0mm
Pen E Mount 19.3mm
Panasonic GF1 19.3mm
Micro 4/3 19.3mm
Leica M Mount 27.8mm
Leica L Mount 28.8mm
Pen F Mount 28.8mm
Contax-G Mount 29.0mm
Contax Mount 31.75mm
Nikon S Mount 31.95mm
Alpa Mount 37.8mm
AR Mount 40.5mm
Konica FP Mount 40.5mm
Canon R/FL/FD Mount 42.0mm
Canon EOS Mount 44.0mm
Exakta Mount 44.7mm
M42 Mount 45.5mm
Pentax K Mount 45.5mm
Yashica Contax Mount 45.5mm
OM Mount 46.0mm
Nikon F Mount 46.5mm
Leica R Mount 47.15mm

ーー

見ての通り、Eマウントよりも長いものがほとんどです。
EFレンズもMレンズもM42も何でもNEXには取り付け可能なので、マルチレンズの母艦としてとても便利な一眼です。
なんといっても、オールドレンズは中古で値段が安いです。
現代的なオートフォーカスも不可能ですが、ある時代の最高級の機種が1万円せずに買えたりするので、あれこれ試して感覚を掴むのもいいと思います。
新品のレンズだったらそうそういろいろ買ってみるなんてことはできません。

20120928-_DSC5430
(NEX5N / Carl Zeiss Sonnar 135mm F3.5)

ただし、EマウントとAPS-Cセンサーの組み合わせであるSONYのNEXシリーズはセンサーサイズがフルサイズ(35mmの一枚のフィルムサイズ)よりも小さいため、レンズの焦点距離が約1.5倍になります。
EマウントレンズはAPS-Cセンサーに特化して設計されているため、フルサイズセンサーが登場したらレンズ資産は活用できません。
しかし、多くのオールドレンズは35mmのフルサイズ用に設計されているため、APC-Cカメラで撮影するぶんには焦点距離が約1.5倍になってしまうものの、今後フルサイズのミラーレスカメラが一般的になってもレンズ資産を引き継ぐことができます。
将来を見据えて、APC-Cサイズ用のレンズは避けておくというのも有りかもしれません。

上のツァイスのゾナーは135mmの単焦点レンズですが、APSの場合約200mmの望遠になるため、少し画角が変わります。
ちなみに、ツァイスはレンズ構成によって名前がついています。同じ焦点距離でも構成が違えば出てくる絵は変わります。
しかし、レンズの選択肢が多いということは、それだけ作る絵にこだわれるということです。

20120911_DSC4790

辺見康孝さんのバイオリン。生楽器から演奏情報をセンシングする場合、コンタクトマイクを使うことは多いですが、これをつけることによって生音がかなり悪くなってしまうのが生楽器の難しいところ。
何か新しい技術がないものか。

20120817-_DSC2419
(NEX5N / Carl Zeiss Flektogon 35mm F2.8)

フレクトゴンはセンサーから20cmくらいまで寄れるんですが、今時のマクロレンズとは違ってもっと粒子感があるザラついた質感になります。画質みたいな尺度だけでみたら全くいいレンズではないんでしょうが、独特の渋い味があります。

20120711DSC06925
20120709DSC06808
(NEX5N /EBC Fujinon 28mm F3.5)

鮮やかだけど深い独特の発色をするEBC Fujinonレンズ。sachikoMさんの楽器はレアなFostex製品で、アナログです。生楽器同様非常にデリケートに扱っていたのが印象的でした。

20121010-_DSC6783

20120721_DSC7677

20120719-DSC07618
(NEX5N / Voigtlander Nokton 40mm F1.4)

レンズの選択はカメラの選択以上に重要とはいえ、僕が作る写真はMax/MSPとかでガチガチにプログラミングして解体、再構築したアルゴリズミックフォトなので本当にディテールの細かい部分にしか作用しません。

rieblue216
(NEX5N / Voigtlander Nokton 40mm F1.4 w.Max/MSP)

Architecture001
(NEX5N / SONY SEL1855, SONY SEL16F28, EBC Fujinon 28mm F3.5, Carl Zeiss Flektogon 25mm F4 w.Max/MSP)

無題1
(NEX5N / SEL16F28+VCL-ECU1 w.Max/MSP)

デジタル以降、もはや音楽もグラフィックもそうですが、1ピクセル単位、1サンプル単位での創作が可能になり、実写かCGか、電子音か自然音かという二項対立は意味を成さなくなっています。僕の価値観では、すべて同じ土俵に乗っかっています。

電子音と自然音を混ぜるなんて、水と油だなんて言う音楽家は今やいないのと同様、実写とCGを行ったり来たりするような表現は少しも珍しいことでは無いと思います。
フィールドレコーディングから電子音楽を作るように、写真家がアニメーションを作ったりプログラミングをしてインタラクティブな開発をすることの壁はコンピューターが取り払ったと思います。

コンピュータ上で一旦数値として扱われている以上、元素材がどう生成されたのかよりも、どういう文脈と意図で素材を選択し使用しているのかという意識のほうが大切なのではないでしょうか。場合によってはカメラすら現代の写真表現では必要無いのではと思います。
Googleストリートビューのキャプチャーやネットの作者不詳の写真を加工して芸術に仕立てる動きも始まっています。

そういった意味で、最も注目している作家は新津保建秀さんです。
写真集「\風景」やヒルサイドテラスでのフレームを超越した脳内に存在するイメージにアクセスさせられるような展示を見て、写真表現とはここまで拡張しているのかと刺激を受けました。

\風景
新津保 建秀
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 258,036

レンズがどうだとか、カメラがどうだとかそういった道具の話は芸術作品の本質では無いと実感できると思います。
単に奇麗な写真、決定的瞬間をとらえた写真ということであれば写真家の作品の力を借りなくてもGoogle画像検索で足りてしまうことは多いのでは無いでしょうか。
しかし芸術の役割は人々の固定観念や思考に亀裂を生じさせ、価値観をひっくり返し、生き方を変えるようなものだと思います。
ネット以降の刺激や情報に溢れた現代では単に美しい写真だけでは芸術としては成り立たず、ブログのイメージとして消費されてしまいます。

音楽よりも早く機械化が進んだ写真がアートとして果たすべき役割は、ひいては音楽がアートの中で果たすべき役割の、先攻したお手本になるのではないでしょうか。

オールドレンズの入手先

j-camera
http://j-camera.net/index.php

camera fan jp
http://www.camerafan.jp/

極楽堂
http://onlyzeiss.web.fc2.com/

新宿中古カメラ市場
http://www.nsi-jp.com/camera.htm

マップカメラ
http://news.mapcamera.com/mapsele.php

オールドレンズ・ライフ (玄光社MOOK) オールドレンズ・ライフ (玄光社MOOK)
澤村 徹

玄光社 2011-05-30
売り上げランキング : 138059

Amazonで詳しく見る

オールドレンズ・ライフ VOL.2 (玄光社MOOK) オールドレンズ・ライフ VOL.2 (玄光社MOOK)

玄光社 2012-06-18
売り上げランキング : 41425

Amazonで詳しく見る

オールドレンズ レジェンド オールドレンズ レジェンド
澤村 徹 和田 高広

翔泳社 2011-11-18
売り上げランキング : 298052

Amazonで詳しく見る