Guido d’Arezzoという作曲家をご存知でしょうか。10世紀のイタリアの修道士兼音楽理論家兼作曲家です。この時代の音楽家、作曲家、音楽理論家はものを読み書きできた聖職者に限られており、彼も例外無く聖職者です。
Micrologusというタイトルの彼の論文は中世の音楽に絶大な影響を及ぼしました。
彼の最大の功績の一つは、死後1000年経過した現在でも尚、支配的なものがあります。
それはソルミゼーションです。
「Ut queant laxis(聖ヨハネ賛歌)
」は、6つの句が音階のうちの一つで始まり、しかも1句ごとに上昇するようになっていたため、句の最初の文字「Ut Re Mi Fa Sol La」を利用し「階名唱法」考案しました。これが現在のドレミファソラです。後にSiの音が加わり、UtはDoとなりました。
更に彼はグイードニアンハンドと呼ばれる方法を使い、聖歌の記憶術を改善した事でも有名です。当時の音楽の世界では、音を正確に表記する方法が確立されておらず、聖歌隊は聖歌を暗譜し、口承で次の代に伝え方法をとっていたため、長い歳月を重ねる間に聖歌自体が変化してしまうことも珍しくなく、暗譜する量や時間にも限りがありました。
それを改善するため、彼は、4本の線の上に四角い音符を書く現在の記譜法の原型を考案しました。
彼の音楽への功績は枚挙をいとわないのですが、今回私が注目したのは、音楽史上最も古いルールベースの作曲技法(現在で言うアルゴリズミックコンポジションや自動作曲)に該当するアプローチです。
彼はラテン語のテキストの母音をピッチに割り当て、単旋律の音楽を生成しました。
存命の現代作曲家Arvo Pärtもこの手の手法で作曲を行った例があります。
詳しくは下記の文献をご参照ください。
Medieval Music (The Norton Introduction to Music History)
The Renaissance Reform of Medieval Music Theory: Guido of Arezzo between Myth and History
Arvo Part (Oxford Studies of Composers)
A History of Western Music
この技法を参考に、ホモリズミックなマテリアルを生成するためにJavaでアルファベットのテキストを解析し、対応するピッチをマッピングすることで音楽を自動生成するプログラムです。テキスト次第で生成される音楽は全く異なります。
2007年の作品なのですが、Max5に移植してyoutubeにアップしました。
パッチの映像はJitterなどは使用しておらず、あくまで、このような内部的な仕組みで音楽が生成されていることを示すためのデモンストレーションです。
余談ですが、PowerPCを使っていた当時よりもマシンのパワーが上がったので、Mixはrewire経由のLive8でリアルタイムに行っています。WavesなどのリバーブなどもMaxと同時に使えるようになったのは大きいです。当時は2台のマシンを接続して生成部と音源部を分担していました。
http://akihikomatsumoto.com/works/
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The Mystery of Do-Re-Mi Christopher Gabbitas Signum Classics 2007-04-24 |
The Renaissance Reform of Medieval Music Theory: Guido of Arezzo between Myth and History
Cambridge University Press 2010-02-28 |