クロマキーとは
クロマキーとは映像処理技術の一つで、映像中の特定の色を透明にし、別の映像を合成する技術であり、電波少年、ウゴウゴルーガなどの日本のテレビ番組でもおなじみのブルースクリーン合成と呼ばれる方法が一般的です。これは青い無地の背景だけの前で人物などの場面を撮影し、後からブルーの部分を別の背景映像と取り替えることで、人物があたかもその背景の中にいるように合成される手法です。背景色にはブルーやグリーンが多く使用されますが、これは人物の肌色と補色の関係にあるという理由です。
テレビ業界では、ビデオクロマキー処理をCSO(Color Separation Overlay)と呼ぶこともあります。この手法は1930 年代からその歴史がスタートし、現在では映画、テレビ、ビデオにおける最も一般的な特撮技法の一つへと発展しました。
クロマキー技術を芸術分野で応用したパイオニアとしてはPeter Campusが有名です。
Peter Campus
Peter Campusピーターキャンパスは1937年生まれのアメリカのヴィデオアーティストであり、今日最も重要な人物の1人です。彼はヴィデオアートの作品に従事する以前はオハイオ州立大学にて実験心理学を研究しており、知覚心理学に興味を持っていました。彼の最も重要な作品の一つが下記のyoutubeの映像コンテンツの"Three Transitions"です。
Peter Campus – Analog + Digital Video + Foto 1970-2003
Verlag der Buchhandlung Walther Konig 2003-10-31 |
この作品で彼はクロマキープロセッサーとヴィデオミキサーを使い映像作品を作り上げました。当時のヴィデオアートの最も開かれた可能性として、撮影しながら合成結果をフィードバックし、モニターで確認することが可能になったことが挙げられます。
"Three Transitions"では、この技術によって彼は自分自身が映し出された映像をリアルタイムにモニタリングしながら作品を作ることが可能になりました。
Three Transitions 1973 Video (color, sound), 4:53 min.
この作品では最初の映像では表裏が黄色い紙を挟んで、2台の向かい合ったヴィデオカメラを使用しています。そして、彼がその紙をカットし、紙の向こう側に移動する映像と、それを裏側から見た映像がクロマキー処理され合成されるため、二重の映像が出力されます。これは映像の錯視効果があり、知覚心理学を学んでいた彼のバックグラウンドを垣間みることができます。彼はこの作品を通じて、我々の現実を知覚する能力の限界を探求しました。
ピーターキャンパスの作品は以下のサイトでも試聴可能です。
http://www.tonkonow.com/campus.html
Max/MSP/Jitterによるリアルタイムクロマキー処理
Max/MSP/Jitterでクロマキー処理を実行するためにはjit.chromakeyオブジェクトを利用します。 jit.chromakeyオブジェクトはcolor アトリビュートを使って、クロマキーの中心となるリファレンスカラーを設定し、tol アトリビュートによって基準となる色の前後の値の範囲を指定します。そして、fadeアトリビュートによって周辺をなだらかに切り取ります。
colorアトリビュートは0から255の値ではなく、0から1.0の浮動小数点数になるという点で注意が必要です。
インレットの関係は、第一インレットに入力されるマトリクスの指定色だけを第二インレットのマトリクスと置き換える仕組みになっています。
この処理を用いたでも映像で実際の処理をご確認ください。
Max/MSP/Jitterのクロマキー処理のデモ映像