線形、非線形という言葉を耳にするけれど、どういったことかよくわからないという人も少なく無いのではないでしょうか。
大雑把に説明すると、ある現象を数式で表すときに、y=ax+bの関数ように傾きを意味するaとy切片のbのパラメーターを制御するだけで様々な傾きを表すことができます。こういうものを線形といい、それ以外のものを非線形と言います。
非線形やカオス理論を応用し、音を作り出す試みはコンピューター音楽や電子音楽関係者の間では一般的なテクニックですが、そのほとんどが音楽家自身による自作のプログラムで音を作っているのではないでしょうか。
少なくとも市販のシンセサイザーでこのような音を作れるものはありません。
理由はいくつかあると思います。
そこには音楽や非音楽、ピッチ、ノイズといった様々なラベリングを明確に貼ることができない特殊性を見ることもできるでしょう。
MIDIのように線形にノートナンバーで周波数を制御することができない点もシンセサイザーとしての規格に収まらないので、DAW用のソフトシンセとして製品化して採算をとる際に目処が立ちにくくなるでしょう。
カオティックな方程式から生み出される波動は周期性と非周期性の間を行ったり来たりするため、ある特定の周波数の音を狙って作り出すことは難しいのです。
そのかわり、特定のピッチを持たないノイズとピッチを持つ楽音の間をシームレスにモーフィングすることが可能です。
そのような特殊なシンセサイザーを開発し、リリースしました。
Logistic Map2.0は過去にリリースしていたものを大幅にアップデートし、Windowsにも対応しています。
ジェネレートした音響は録音機能があるので、好きな部分を切り取って素材としてDAWで編集して更に作り込んでいっても面白いでしょうし、これ一台でライブをやることも可能だと思います。
昨今またガジェット的なアナログシンセサイザーが小さなブームになってきましたが、Logistic Mapはアナログでは作れないデジタルアルゴリズムならではの原理のシンセサイザーです。
歴史的な名作を懐古したり、再発見、再発明するというのも大事ですが、それ一辺倒だけでは音楽は前進しないことはヴィンテージ一辺倒のロックギターのここ10年の停滞を見れば明らかで、受け入れ難くても今までに聴いたことが無い音を最新技術で作り、提示していくということが僕の中で最も重要なことです。
Logistic Map 2.0 for OSX
Logistic Map 2.0 for Mac OSX
Logictic Map 2.0 for Windows
Logistic Map 2.0 for Windows
デモ映像にあるように、このシンセサイザーは自律性を持っていて、ほっておくとどんどんサウンドが変化していきます。その変化も、単純に周期的なLFOのモジュレーションや、乱数による全くのランダムとも違い、人間の演奏のように有機的な変化をします。
このシンセサイザーを通じて、ノイズ、楽音、演奏、作曲、生成、人間、コンピューターのようなものを隔てているものは何であるのか、改めて考える機会になればと思います。
その他のソフトウェア、M4Lプラグインは以下のサイトにまとめてあります。
デモムービーなどをご覧になればどのような音が作れるかイメージできると思います。
http://akihikomatsumoto.com/download/