Max/MSPというソフトをご存知でしょうか。
Max/MSPは現在メディアアート、インタラクティブアート、作曲、ネットワーク作品の分野で最も広く利用されるプログラミング言語であり、弱点もあるもののこの分野では避けては通れないほどの影響力を持ったソフトになっており、コンピュータ音楽の作曲家であれば必ず抑えておかなければならない音楽言語と言えるでしょう。
Maxの歴史は1980年代フランスの音響研究所IRCAMのMiller Puckette(ミラーパケット)がインタラクティブなコンピュータ音楽のシステムの構築のためにMacintosh用のPatcher という音楽言語を書いたところからスタートします。
このソフトが最初に音楽作品で利用されたのは、1988年フランスの作曲家Philippe Manoury (フィリップマヌリ)のPlutonという作品です。
Philippe Manoury: Sonus ex Machina: Pluton Philippe Manoury Ondine 1998-06-16 |
1989 年IRCAMはNeXTのためにMax/FTSというバージョンを移植します。Faster Than Soundの略がFTSです。これはISPWと呼ばれるリアルタイム音響合成、音響処理のための外部装置を必要としました。Max/FTSはIRCAMをはじめとして世界中の30箇所もの研究所やスタジオに導入されました。
1989年にはOpcode Systems社にMaxのライセンス供与を行い、1990年には初の商用版のMaxであるMax/Opcodeを発売します。後にOpcodeは David Zicarelliが設立したCycling74社から発売されるようになります。一方、1996年にMiller Pucketteはカリフォルニア大学サンディエゴ校にてPDというMaxの音響処理機能拡張版とも言えるソフトを開発しています。これに触発され、 Zicarelliは後にMidi生成機能しか持たなかったMaxにもリアルタイム音響処理を導入しMSPというパッケージとして発売されました。この MSPという言葉にはMiller S. Pucketteの意味が含まれています。
1998年IRCAMはオープンソースjava版のMaxであるjMaxを発表しますが、プロジェクトは現在では終了しています。
2009年現在の最新版はMax5。
LCクリエイティブのほうでこのMax/MSPに関するオーディオ処理のワークショップを開催します。
http://www.lc-creative.com/workshop/audio.html
申し込みも上記リンクからです。
内容は初心者向けのオーディオ処理のための技術を講義、実践してもらうものです。
オーディオ処理とは例えば、DAWで使うようなDelayやChorusといったプラグインのようなエフェクトです。
これらを原理から解説し、実際に皆さんに作ってもらい、更にDAW付属のプラグインなんかでは出来ないようなユニークな処理をするオーディオ処理プログラムをMax/MSPで書いてもらおうというワークショップです。
とはいえ、難易度は低く設定しています。
中級者には物足りない内容になるかと思います。
あくまで、Maxを買ったけど使いかたがわからずに放置している人やマニュアル読んでもチンプンカンプンといった人達に向けたやさしい解説をします。
主な講義予定内容
* Max/MSPの概略、インストール方法
(Max/MSPのメリット、デメリット、応用事例)
* Max/MSPの各種ウインドウの使い方
* パッチングの方法
(エディットモードとプレゼンテーションモード)
* オブジェクト指向プログラミング
* オートメーションとミキシング
(パラメータの自動制御と自動生成、オーディオミックスの方法)
* バッファーと音響処理
(Prefuse73のスライス処理やAutechreの技法)
* デジタルフィルターの原理
(FIR, IIR, Combフィルタ)
* デジタルフィルターの応用
(湯浅譲二やPaul Lanskyの音楽の分析)
* ディレイの原理
(デジタルディレイとアナログディレイ)
* ディレイの応用
(IRCAMのvdb~アルゴリズム)
* 音響分析と応用
(Miller Pucketteの分析オブジェクトと制作への応用)
* ピッチシフトとタイムストレッチ
(簡単なアルゴリズムや応用例の紹介)
Max/MSP Audio Processing Workshop
コンピュータ音楽―歴史・テクノロジー・アート
東京電機大学出版局 2001-01 |
2061:Maxオデッセイ―音楽と映像をダイナミックに創造する!最高の開発環境を徹底解説
リットーミュージック 2006-10 |