CHILL WAVE系のSerumプリセットとオーディオループファイルのサンプルパックをリリースしました。
Chill系音楽に使えるようなアンビエント色強い素材を意識してますが、かなりの部分Wave寄りです。
Ultimate Chill Wave Samplepack (24bit/48khz wav)
All wav in C Major
47 Bass
46 Drums
45 Leads
66 Serum Presets
4 Type Beats
This license lets others distribute, remix, tweak, and build upon your work, even commercially.
http://akihikomatsumoto.bandcamp.com/album/chill-wave-sample-pack-24bit-48khz-serum-presets
ではそもそもこのサンプルパックで取り上げてるWaveってなに?ジャンル?
って思う人のためにいくつか参考リンクを。
Dubstep以来の発明か?今、UKで躍進する新ジャンル「Wave」とは?
https://block.fm/news/wave_new_genre
初心者のためのUK注目Bass Musicジャンル”Wave”攻略ガイド
http://www.jfmusicwritterclass.com/entry/wave-beginners-guide
ディーン・フジオカが最新曲「Echo」で注目の音楽ジャンル「Wave」をJ-POP化。でも「Wave」ってどんな音楽なの?
https://block.fm/news/deanfujioka_wave_newsong_echo
活動が盛んな主力アーティストでいうとKareful、Deadcrow、Sorsari、Skit、Enjoii、Klimeksあたりになるでしょうか。
Vaporwaveから派生するベッドルーム系リスニングエレクトロニックミュージック系のメロディー、ハーモニーに加えて、彼らのinstagramアカウントから影響があきらかなように西洋から解釈した日本のゲームミュージックの雰囲気
加えて、ビートについてはゴリゴリのヒップホップ、グライム、トラップ、ジュークフットワーク、ダブステップなどのアンダーグラウンドな最先端UKベースミュージックの影響が色濃い点が、VaperwaveやChillwaveのようなシンプルな4つ打ち系ビートの音楽とは全く異なる攻撃的な演出をしているのが特徴といえるのではないでしょうか。
心地よいメロディーやハーモニーを突き放すかのようなベース、ビートが押し寄せてくるところが、脱力系のゆるふわシンセポップや純粋なアンビエントが嫌いなコアなビートメイカーが好きな層にも刺さるポイントだと思います。
BPMは120くらいのゆるやかなものから160近い速いものまであります。4つ打ちの作品というのがほとんどない点が安易なリスニング系音楽と全く異なるところだと思います。ベースの音色は多重にオシレーターディチューンされたロングトーンが多いですが、これもサイドチェインでキックから刻むことによって、ふんわりしたアンビエント感で全体がぼやけそうになる中、現実に引き戻す牽制をされるような感じがあります。EDMなどで四つ打ちでコードパッドにサイドチェインをかけると一定のリズムでバックグラウンドの景色が波打つような効果が出る心地よさはよく耳にすると思いますが、Waveのサイドチェインはキックが四つ打ちではないので、予定調和を破壊する感じに背後のアンビエンスを切り刻む感じがあります。リバーブにすらサイドチェインをかけて、規則的でナチュラルな響きの心地よさとは違ったベクトルでも攻めた音作りをするのがWaveの特徴的だと思います
ベースミュージック系のビートが入ってればなんでも最先端に聴こえるのは最近のダンスミュージックの特徴な気がします。
もっというとベースミュージック系の凝ったハイハットだけでも音楽の解像度というか新しさが突然立ち上がってきたりすると感じます。
DeadcrowのGTRはキックのみならずスネアにも強烈なサイドチェインがかかっていて、ゆるふわなメロディーやハーモニーを突き刺すような効果を果たしており、ベースミュージックを経過していないとあり得ないサウンドメイキングの発想だと思います。美しいメロディーやハーモニーをそのままアンビエントに聴かせず、主張が強い強烈なビートで引っ張るところはベースミュージックそのもの
Sorsariのようにファイナルファンタジー等の日本のRPGゲーム音楽の世界観の影響が色濃いアーティストも多々います。DJセットでも多々主要キャラのケフカの声のサンプルや魔法系のSEが聞こえます。
Vaporwaveが80年代のレトロフューチャリスティックな世界観の影響が色濃いジャンルだとすれば、Waveは90年代ゲーム音楽や映画音楽の影響が濃いシーンかもしれません。
Sorsariの音楽はFF VIあたりのサンプリングも多々聞こえますし、音色のセレクトやコード進行的な雰囲気の作り方などは今最もファイナルファンタジーの劇伴を発注すべきアーティスト/作曲家に感じます。
彼ならもっとモダンな形で現代的なFFの解釈を最先端の音で提示してくれるでしょう。
DeadcrowのSubsonicはUKダブステップにも接近している感じで、しかしながら、もっと近未来的なWave的エレクトロニックな音色がWaveらしさを支配しています。最新のUKダブステップとして聞いても面白いと思います。スクリレックス以降のアメリカのダブステップとは全く違いますし、欧米のフェス文化に影響を受けている日本ダブステップとも全然違います。
YedgarのMagic Cylinderはジュークフットワーク系のビートをウェーブ風にアレンジしているような部分があります。上物はゲーム音楽のようなきらびやかで幻想的なものという点がシカゴフットワークのようなシーンの開放感とは全く異なる点だと思います。
Kareful & PholoのSecond Swordなどはドラムだけ聴けばグライムそのものです。しかしながらディチューンでピッチが曖昧になったベースラインやメロディアスなシンセリードなどは本家のグライムには無い特徴です。
SkitのWest London EmpathはWaveの特徴をよく表しています。ディチューンされたロングトーンのベースにトラップ以降の細かいハイハットの刻み、ヒップホップとは異なるグライム由来の跳ねるようなキック。USのダンスミュージックとは異なる軽いスネアの音色、90年代風のシンセパッド。幻想的なリバーブ。
そしてWaveをJPOP化するという難題にトライしているのがディーンフジオカ氏。ストレートにダンスミュージック/ベースミュージックの最前線を突き進むのではだめで、最低限JPOPローカライズしなければ日本のミュージシャンは日本市場相手に生きていけないというのは最近僕も某メジャーレーベルと契約して痛感しています。ロックもヒップホップもフューチャーベースもそうですが、一番最初に日本ローカライズするっていいうのは最初の辞書を作るような作業で大変なんです。ものすごくクリエイティブなエネルギーが必要。しかも大幅に改ざんしながらJPOP化するので本家と違うという批判の嵐が巻き起こるなかでクリエーションしなければいけないので、単に海外産のジャンルの劣化コピーをする自称本格派ミュージシャンよりも全然難易度が高い行為なので、その点は賞賛に値すると思います。気鋭のジャンルの最初のJPOPローカライズは音楽制作能力だけじゃなくて業界政治力やファンの母数など様々な素養が全て揃っているアーティストにしかできない大事業です。
様々な作品を紹介しましたがWAVEのレーベルとしては、Kareful、LTHL、Stohouが設立したLiquid RitualやWavemobのサウンドクラウド、Spotifyプレイリストをチェックするとこのジャンルの全容がつかめるかもしれません。
オンラインを中心に発達するこの音楽はクラブに足を運べない20歳以下の世代が主力だったりします。
日本でも10代のトラックメイカーが新しい音楽文化を作っているように海外でもこのクラブに入れない世代の音楽が新しいものを生み出す流れはますます加速しそうです。
話は逸れましたがこのサンプルパックのプリセットやファイルは随時追加予定です。購入者は無償でダウンロードできる素材がどんどん増えていきます。
タイプビートも現在4曲入ってますが、これも僕個人のアルバム並みに増やす予定です。
実質ジャンルで音楽性を制限したコンセプトアルバムのような感じになっていくかもしれません。