Roland BoutiqueのシンセサイザーJD-08は90年代の伝説のハイエンドシンセJD-800の小型復刻版です。このシンセを知るにはJD-800を知ることが最も近道だと思います。
https://en.wikipedia.org/wiki/Roland_JD-800
JD-08に搭載されているプリセットはそれ一つ一つが独立した楽器のように完成されたものなので、自由に音作りするのがシンセサイザーの醍醐味の一つではありますが、プリセットをそのまま使い、作曲や編曲の中で独創性を探求する使い方も面白いと思います。オーケストラの楽器は普通ハックせずありのままの素材として使うように。
全部で100プリセットが搭載されているJD-08の全てのサウンドチェック動画を作成しました。
サウンドはこれぞ90年代という音ですが、90年代には存在しなかったジャンルに応用することこそ今一番フレッシュな使い方ではないでしょうか。
動画のデモではREMNANT.exeやDeadcrow、DyzphoriaのようなHardwave系のアルペジエイターで生成したフレーズをあててます。
Hardwave arpeggiator (https://akihiko-matsumoto.gumroad.com/l/HardwaveArpeggiator)
A15番のWailing Guitarなど今のHardwaveでよく聴かれるサウンドだと思います。
Hardwaveに興味が湧いたかたはこちらのプレイリストはいかがでしょうか。
JD-800から大幅にアップデートしている部分としては同時発音数が128音になっていることでしょう。
https://rolandus.zendesk.com/hc/ja/articles/4411755187867-JD-08-同時発音数を教えてください-
JD-800はD-50同様アタック部分はサンプルプレイバック、サステイン、テイル部分はデジタルシンセシスを組み合わせて当時のメモリ容量の限界を補うLAシンセシスが採用されており、ローランドUSのR&D-LAで開発された最初のシンセサイザーです。
サンプリング素材とプリセットは現在Omnisphereで有名なSpectrasonics社の創業者エリック・パーシングが手がけています。
エリック・パーシングはJuno-106、JX-3P、JX-8P、Jupiter6、D-50、JV-1080、JP-8000、MC-303、SE-50、VS-880など80から90年代にかけてローランドの名だたるシンセのほとんどのサウンドデザインを手がけている人物で、ハードウェアの付属物としてのシンセサイザーという考え方だったローランドから抜けてSpectrasonics社を設立して今に至っているシンセサイザー界隈ではレジェンドです。
サウンドデザイナーのトップが語る、今までとこれから。
https://www.minet.jp/contents/article/spectrasonics-ericpersing-interview/
エリック・パーシング氏が明かす“音楽的なサウンド”の源泉
https://www.snrec.jp/entry/special/spectrasonics_persing
Roland History
https://www.spectrasonics.net/company/other/ep-roland.php
こうしてハードウェアとしてのシンセではなく、その中身を作るサウンドデザイナーの視点で考えるとOmnisphereの萌芽は既にJD-800に見てとれるのではないでしょうか。
エディットもできるけど、サンプリングのごとくプリセットライブラリをそのまま呼び出して使う使い方をする人はOmnisphereユーザーには少なくないと思いますが、JD-800、D-50も同様だったと思います。ちなみにOmnisphereのプリセット制作にも彼は参加しているのでソフト内のプリセット制作者検索でEric Persingと入れてみると、ローランドから引き継いだようなプリセットが多数見つかります。同社のKeyscapeなどにもJD-800のエレピの音(JD-08のA13番Crystal EPs)はプリセットされてます。
音色のサウンドデザインをしている作者が同じという意味では、Omnisphereの原点をJD-800に見出すことはできると思いますし、もしも90年代にOmnisphereがあったらJD-800のような音が満載だったのではないでしょうか。
サウンドデザイナーなら別として作曲する人間であれば、プリセットを選ぶことが一から音色を作ることと比較して創造的ではないとはいえないと思います。それが肯定されるのであれば、ヴァイオリンやピアノを自分で制作できなければ作曲家は創造的ではないと言っているのと同じで、歴史と矛盾してしまいます。プリセットを選ぶ面白さを再認識させてもらえるシンセとしてもJD-08は存在価値があると思います。
JD-08やJD-800はスライダーが豊富でアナログシンセの音作りの楽しさを復権しようと試みた90年代の産物ではあると思いますが、複雑化するデジタルシンセシスにはハードウェアで音作りできることの限界もあり、シンセサイザーは本質的にハードなのかソフトなのか考えさせられます。
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Roland Boutique JD-08 主な仕様
ユーザー・メモリーサウンド・パッチ: 256
パターン: 128コントローラー
リア・パネル
電源スイッチ
ボリューム・ノブ
パレットセクション
TONE A–TONE Dスライダー
LFOセクション
LFO SELECTボタン
RATEスライダー
DELAYスライダー
FADEスライダー
WAVEFORMボタン
OFFSETボタン
KEY TRIGボタン
WGセクション
PITCH COARSEノブ
PITCH FINEノブ
PITCH RANDOMスライダー
KEY FOLLOWスライダー
WAVE FORMノブ
LFO 1スライダー
LFO 2 スライダー
PITCH/TVF/TVA ENVセクション
TIME KEY FOLLOWスライダー
T1–T4スライダー
L1–L4スライダー
SUSTAIN LEVELスライダー
ENV SELECTボタン
TVFセクション
MODEボタン
CUTOFF FREQスライダー
RESOスライダー
ENVスライダー
KEYFOLLOWスライダー
LFOSELECTボタン
LFOスライダー
TVAセクション
LEVELスライダー
BIAS DIRECTIONボタン
BIAS POINTスライダー
BIAS LEVELスライダー
LFO SELECTボタン
LFOスライダー
TONE A–TONE Dボタン
LAYER-ACTIVEボタン
ARPEGGIOボタン
NOTEボタン
COMMONボタン
EFFECTSボタン
STARTボタン
EXITボタン
VALUEノブ
BANK 1–8ボタン
NUMBER 1–8ボタン
MANUALボタンエフェクトディストーション
フェイザー
スペクトラム
エンハンサー
ディレイ
コーラス
リバーブステップシーケンサー2パート
64ステップ
8音(ポリフォニック)表示機7セグメント4桁(LED)接続端子EXT CLOCK IN端子:モノ・ミニ・タイプ
PHONES端子:ステレオ・ミニ・タイプ
OUTPUT端子:ステレオ・ミニ・タイプ
MIX IN端子:ステレオ・ミニ・タイプ
MIDI (IN, OUT)端子
USB端子: USB Type-C(R) (オーディオ, MIDI対応)電源充電式ニッケル水素電池(単3形)×4
アルカリ電池(単3形)×4
USBバス電源消費電流500 mA (USBバス電源)連続使用時の電池の寿命ニッケル水素電池(単3形):約6時間
※電池の仕様、容量、使用状態によって異なります。付属品取扱説明書
安全上のご注意チラシ
アルカリ電池(単3形)×4別売品キーボード・ユニット: K-25m
Boutiqueドック: DK-01外形寸法幅300 mm奥行き128 mm高さ49 mm重さ(電池含む)840 g