Make Noise社の0-Coastは子供に買い与えるファーストシンセサイザーとして一番いい電子楽器の一つなのではないでしょうか。0-CoastにはMIDIの知識も鍵盤の技術も不要です。
この一台だけでもパッチングの組み合わせだけで無限に色々な音が作れます。このサイズに昨今のサウンドデザイン界隈で最も進んだ製品をリリースし続けているMake Noiseらしさが凝縮されており、Shared Systemを彷彿させるほどこの一台にいろいろな個性が詰まっています。既にモジュラーシンセをやっている人にも、パソコン完結で音楽をやってる人のファーストハードウェアとしてもおすすめです。
これはMake Noise 0-Coast 1台のみを使って作られた音楽です。
日本語マニュアル
製品情報
https://fukusan.com/products/make_noise/0coast/
https://clockfacemodular.com/en/products/make-noise-0-coast
https://www.snrec.jp/entry/productreview/2017/04/65613
0-CoastはMoogを始めとする”East Coast”の減算合成的なシンセシスの設計とBuchla/Serge/Wiard等のウェブシェイピングによるディストーションシンセシス系の”West Coast”の設計の両方が混じり合ったようなセミモジュラーシンセです。昨今はユーロラックのようなモジュラーシンセが流行していて、DAWだけでは作れないようなニッチな音作りに貢献していると思いますが、セミモジュラーは単にフルモジュラーシンセ の小規模版というわけではあません。ギターのセミアコがフルアコの下位互換ではないようにセミモジュラーにはセミモジュラーの魅力があります。
その一つがサイズ。この薄さでこの機能を実現しようと思ったらユーロラックモジュラーでは至難の業です。iPad並みに薄くて軽いシンセが0-Coastです。つまみは沢山トップに配置されているのでiPadよりはリアルタイム操作しやすいです。リアルタイムに操作しながら音色を変え続けるようなアプローチはソフトシンセのオートメーションよりもハードシンセを使うほうが有機的な変化を生み出しやすいです。
セミモジュラーではありますが、基本的な結線は内部でも行われていて、何も繋がずに音を出すことも可能です。より凝った音作りをしたい人はパッチケーブルで途中で信号を取り出して、デフォルトでつながっているモジュールとは違うところに接続して自分だけの音作りを考えていくシンセです。一番の特徴的な部分がランダムモジュール(セクション?)だと思います。トリガーされたタイミングでランダムな電圧が発生し、それを様々なパラメータにパッチングできるのですが、そういった機能を持つシンセは他に記憶にありません。
オシレーター部分はシンプルな三角波を変形させていく仕組みです。周波数を高周波でモジュレーションして新たな倍音を発生させるFMや、OVERTONEで波形の形自体を変形させるウェーブシェイピング、MULTIPLYによって音量を爆発的に大きくして、天井に当たった部分を折り返すことで波形を複雑にし倍音を発生させるウェーブフォールディング処理で音を加工していきます。 元の波系にとことん倍音を加えて音色を作っていく方式である点がMoogなどのシンセとは異なる特徴です。倍音が多分に含まれる波形を削って減算的に音を作るのではなく、倍音がほとんどない三角波などを変形させて倍音を生み出していく方式が0-Coastのシンセシスで、ここにはMoogやRolandのシンセのようなフィルターはありません!削るのではなく増やすのが0-Coastです。
ローパスゲートと呼ばれるプラグイン界隈では聴き慣れない、音量の変化と音色の明るさの変化を同時に発生させる仕組みで、小音量のシグナルはフィルタリングされます。パーカッションのようにアタックが一番鋭くて徐々に音量と倍音が削られていく仕組みの楽器がアコースティックには多いので、そういった意味でも自然に倍音の変化が生じます。
三角波か矩形波かの2種類の原形波と、内部で加工された波形をバランスノブでクロスフェードしてい倍音構成に時間的な変化を与えることも可能という方式。
CV/Gateによるコントロールは、パラメータ制御の信号とオーディオ信号の境界がないため、LFOとしてモジュレーションを与えるセクションをオシレーターとして利用することもできてしまいます。様々なブロックを相互にある程度自由に接続していくことが可能です。こういうシンセってモジュラー以外にはありませんし、ソフトシンセでもこういうものはプログラムを自作でもしない限りここまで自由度が高いものは存在しないと思います。
0-Coastは音楽や音響合成のことなんて何も考えずとも、前提知識がなくてもつまみをいじってるだけでとことんいろんな音を引き出すことができます。
コンパクトながらMIDIなどで通信せずとも内蔵のランダム電圧生成機から1v/octにルーティングしてランダムフレーズが作れたり永遠に遊べます。
セミモジュラーなので、パッチングせずとも一台で完結するシンセサイザーですし、パッチングで複雑に信号をルーティングしていくことができます。
ユーロラックとも接続できます。
コントロール信号もオーディオ信号もすべて電圧で制御するモジュラーシンセならでは方式で、初心者でも音符と音色の境界線を探求できるシンセ。
Max/MSPのMSP系オブジェクトでオーディオレートですべてをコントロールしてしまう発想はモジュラーシンセから由来しているんだなと再確認。
Cycleコントロール可能なRise, Fallといったモジュレーターはオシレーターにもなったり、ランダム電圧などMake NoiseでいうとWogglebugやMATHSのような機能が搭載されてます。これをモジュラーで一つずつ機能を揃えていくとこんな価格では実現できない機能です。
Make Noise 0-Coast
・2 Channels of MIDI to CV and MIDI to Gate
・Voltage Control of all circuits
・Patchable w/ 13 Sources and 14 Destinations
・Compatible w/ Eurorack Modular Synthesizer Signals
・Sync to MIDI Clock
・Dual mode MIDI Controlled Arpeggiator
・Triangle Core Analog VCO
・Uncommon Timbral Animation using OVERTONE & MULTIPLY
・Unique Transistor Based Low Pass Gate DYNAMICS
・External Audio Input for combining w/ outside sounds
・Headphone and Line Level Amplifier
・Small Rugged Steel Enclosure