Maxでセリー音楽を自動生成するプログラムを作りました。
以前に作ったプログラムをMax5のタイミングオブジェクト対応に改訂しただけなのですが、この対応によって、MIDIのクオンタイズがかけられるようになり、FinaleやLogicなどの別の音楽ソフトからMaxで生成したSMFを読み込んだ場合のタイミングのずれが解消できるようになりました。別ソフトを介しますが、よりIRCAMのOpenmusicに近い使い方が出来るようになったと思います。
http://homepage.mac.com/sinx_music/maxmsp/serial.html
さて、この映像のパッチについてですが自動作曲のためのアルゴリズムというよりは、面白いセリーを発見するための補助装置のような役割になります。
五線譜とピアノだけを使いセリーを決定するのには膨大な時間がかかります。リズムや同時発音、オペーレーションなど様々な要因が重なって実際の音楽が形作られるためです。
12音技法などではこのセリーこそが元来の調性のような概念にあたるため、この選び方で最終的な音楽のアウトプットが大きく左右されます。よって、作曲家はセリー選びに最も時間を費やしたりするのですが、ありとあらゆる組み合わせを想定してセリーを決定していく作業は非常に難易度と想像力が求められます。
このMaxパッチを使えばそれが解消されるわけではありませんが、セリーを決めたらすぐさま実際の音楽としてそのセリーを実行できるようなアルゴリズムが組まれているため、セリーの評価が容易になります。
更に、このMaxパッチでは12音セリーだけでなく、全音音階(ホールトーンスケール)、全音階(ダイアトニックスケール)、八音音階(オクタトニックスケール)などから構成されるセリーを評価することも可能です。
映像では実際にホールトーンやダイアトニックのセリーもデモンストレーションしております。セリーの順序の違いで、最終的にアウトプットされる音楽が大きく変わることがわかると思います。
このような音楽では隣接するピッチクラスの集合による響きが鍵を握ります。同時に、セリーのオペレーション前後のピッチクラスの共有数によって調性音楽でいうところの近親調や遠隔調への転調時の心理効果のようなものを生み出すことが可能です。