現代音楽のノーテーションとして、図形楽譜というものが前衛の時代にもてはやされました。
今時の音大生でも図形楽譜を使って創作をするような課題は一度は経験があるかと思います。
図形楽譜の面白いところはやはり、メタ作曲的な部分であると僕は思っています。
生み出される音楽を完全に制御できるわけではなく、しかしながらある程度想定もできる楽譜。
ある抽象的なルールやグラフィックを演奏家の解釈でリアリゼーションすることで、解釈の幅が生まれその幅を含む音楽を作曲と捉える点が五線譜の楽譜やDAWの録音によって作られる音楽との違いです。録音による再生が毎回異なってしまっては困るでしょうが、あえてそういった齟齬を利用する面白さもあります。
実際に図形楽譜から結果的に生じる音は、まったくのランダムというわけではなく、グラフィックによって管理されたランダムネスが存在します。
演奏毎に楽譜は音としてリアリゼーションされるため、毎回どこか異なる音楽が奏でられるわけですが、音符ではなく図形で書かれている以上、毎回同じ部分、毎回違う部分、一定の方向性などが出てきます。そういったことを考えながら図形楽譜は作られていたりします。
これはコンピュータのアルゴリズムや確率理論を使った作曲法にも通じるメタ的な視点です。
一つ一つの音楽を作曲するのではなく、作品群を統率するためのスタイルを規定する。そんな作曲法にも応用できます。
図形楽譜に関してはNotations21というとてもよくまとまった写真集があります。
http://notations21.net/
ケージ、高橋悠治からシュトックハウゼン、現代のコンピュータープログラムpuredata(PD)を使った電子音楽の図形楽譜までカラーで300ページを超える圧倒的情報量です。
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作曲家は必須の資料ですし、美術とかデザインをやってる人にとっても視覚と聴覚の関係をひもとくと面白いでしょうし、メディアアートなどでオーディオヴィジュアルインスタレーションなんかをやっている人にも参考になる部分は多いと思います。
ちなみに僕も5年くらい前にAntiphonというレーザーとプロジェクション、電子音響を使ったインタラクティブ作品を作ってます。
これも一種の図形楽譜として見ることもできるでしょう。
リアルタイムものなので、当時のカメラ性能とコンピュータ処理能力ではあまり綺麗な映像が作れませんでしたが、今だったらもっと綺麗にできるのでリメイクもしたいところです。