フィールドレコーディングの意義

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昨今、デジタルのポータブルレコーダーが手頃な値段で各社から出ている影響からか、フィールドレコーディングを行う音楽関係者は増えました。

その用途は多種多様。
大まかに以下の使われかたがあると思います。

1. 楽器の演奏、練習を収録する
2. ミュージックコンクレート / アクースマティック音楽の素材として非楽音の音響を収集する
3. 自然界の様々な響きを録音する
4. 電車愛好家による走行音の収録

音を収録するとはいえ、実に多様な使われかたがあり
ちょうどカメラと似たような存在なのではないでしょうか。

風景、もしくは特定の被写体にマイクを向けてある時刻の音を刻む。
そのようなことが手軽にできるポータブルレコーダーが簡単に入手できるようになった現在、プロもアマチュアも様々な音響を記録していると思います。

それこそ、自宅で高級オーディオで鑑賞する人もいれば、コンピュータの処理によって原型を留めないほど全く別の素材に作り替えて自分の音楽の一部に吸収する人もいます。

しかし、特に音楽を作ったり演奏していたりする人がフィールドレコーディングを通じて得られる最も重要なことは、聴覚が敏感になるということではないでしょうか。

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録音をするということはその対象の音だけに神経を集中させて音を聞くということです。
楽器の演奏家が練習を録音するということは、後で鑑賞するためではなく、演奏行為中は演奏に付随する指や腕などの身体的運動にそれなりに神経を使うため、聴くことだけに脳を集中させることが難しいという理由もあります。
これは屋外でのフィールドレコーディングでもスタジオでのレコーディングでも変わりません。

通常とは違った意識で音を聴くことでこれまで聴こえなかった音が聴こえるようになります。
クラシック音楽において和声を学習すると聴こえなかった内声の動きが聴こえるようになることと同様、フィールドレコーディングを体験すると世の中には実に様々な音が溢れていて
時にはそれがノイズ(例えば静かな音楽演奏における空調の音等)として煩わしいことにあらためて気付いたり
バックグラウンドに埋もれつつも魅力的な音響(フィールドを360度包囲する虫の鳴き声等)を発見することもあるでしょう。

そして、それを体験して以降は日常生活においても音そのものへの意識が敏感になり、様々な音表現のアイデアがわき起こってきたりします。

デザイナーやアーティストが普段実にものをよく見ていて、それを制作の糧としているように、音楽を作る人間も日常の音をいかにとりこぼさずに聴き、それを制作の糧とできるかが肝なのではないかと思います。

音は時間と空間を持っています。
時間に対する変化、空間的な音源の配置等はフィールドレコーディングをしていて意識が高まりますが、そのまま作曲の形式、オーケストレーション、ミキシングを自然界が生成していると考えることも可能でしょう。そして、それを全く別の音色や楽器で再現することも十分な訓練になります。

フィールドレコーディングを続けていれば、素材のコレクションはどんどんと蓄積していって、デジタルサウンドファイルは様々な場面で利用できるでしょうが、そういった物的な価値以上に、外界に聴覚を研ぎすませることができるという意味では、特に素材を集めていなかったり、何に使う用途も無いという音楽家でも意味のある活動となると思います。

僕もフィールドレコーディングした素材を元に、Max/MSPで独自の音響処理をし新たな素材を生成したりしています。
このような音響はフィールドレコーディング無しには作り得なかったと思います。


http://soundcloud.com/akihiko

Korg MR-2 はDSDと呼ばれる方式でPCMとは異なる原理で録音が行われます。高周波の繊細な動きなど解像度を要する録音で力を発揮します。その後付属のKorg Audio Gateを使ってDAWで編集するためにWavやAiffに変換するケースが多いと思われますが、その場合でも録音自体をDSDしておくとPCMモードで録音した場合と比較して高いクオリティーを維持することができます。フィールドレコーディングのような無限遠まで続く自然界の微細な振動を記録するには最適なレコーダーだと言えます。

ローランドのバイノーラルマイクロフォンは無指向性のイアフォン型マイク。バイノーラル録音とは2つのステレオ無指向性マイクを耳に装着し、自分の耳に聞こえる状態と全く同じように音を収録することが可能です。これは耳たぶの形状や肩からの音の反射、吸収等を含んだ録音となるため、録音する人間によって若干音がかわります。CS-10EMは耳に装着することで録音しながらのモニタリングが可能であり、この価格帯では非常に高い品質でバイノーラル録音を行うことが可能です。バイノーラル録音は特に特定の音源を録音するというより空間的な広がりや運動をそのままレコーディングしたい場合に有効でしょう。