最近よくComputer-Aided Algorithmic Compositionというアプローチで作曲をします。簡単に言うと、コンピュータを使って作曲アルゴリズム構築の支援をすることです。あくまで作曲者は人間なのですが、様式、すなわちアルゴリズムの設計、処理にコンピュータの力を借りることです。シーケンスソフトの打ち込みとは全く意味が違い、音楽理論をソフト上に実装していくスタイルです。
自分の場合は音楽をオブジェクトの集合と考え、オブジェクトの振る舞い、組み合わせかたなどを自らデザインし、オブジェクトの実行をコンピュータに行わせているような感覚で音楽を生成しています。ときにコンピュータは使ったり使わなかったりします。
いろいろソフトを弄っていくうちにだんだんと面白い音が出来上がっていくようなDTMソフトとは対照的で、このソフトは作曲する音楽に対して最初から明確な作品の様式、アルゴリズムのプランが出来上がっていなければ、何度トライしても不規則な音の連なり、つまりノイズになってしまい、いっこうに音楽的な結果を出力出来ません。つまり、より潜在的な作曲能力が求められ、それを生かせるソフトです。
画像は作曲中のモノフォニーのギター曲のためのOpenmusicのアルゴリズムの一部です。Lisp言語のちょっとした計算によって、ある音列(無調音楽ではないので、必ずしも12音とは限らない)をT, R, I, RIで変形しています。これらを元に素材やセクションを作成し、人間の手で全体を構成していきます。この作品では計算機としてコンピュータを使用しています。
自分の数ある作曲のアプローチの1つのパターンでしかありませんが、音楽を作曲するというより音楽様式や理論といったもう一つ上の階層の創造物を生み出す能力が求められるので、難しいとともにやりがいもあります。
このようなアプローチを使って、単に工学的な先進性、創造性だけでなく、音楽的にも素晴らしい作品を作るためには調性和声や対位法などを通じて過去の音楽様式の研究、実習による訓練は書かせません。