Roland Boutiqueシリーズとして、Studio Electronics社と共同開発したアナログ・シンセサイザー SE-02が2017年にリリースされました。
このサイズでフルアナログのシンセサイザーはすごいです。
他のBoutiqueシリーズとは違って、発熱も相応にあります。
http://quelltll.com/blog/?p=178
Studio Electronics社といえば最近ではモジュラーシンセのメーカーとして知った人も少なくないのではないでしょうか。
Studio ElectronicsといえばMinimoogのラックマウントクローンであるSE-1でも有名なメーカー。
http://www.studioelectronics.com/products/synths/se-1x/
今回のRolandとのコラボでのSE-02はこの後継にあたるものと考えられます。
SE1の時点でMinimoogをモチーフにしながら独自の要素を足していましたがSE-02はMinimoogのオリジナルに近づいた部分とさらに魔改造された部分が混在した独自のシンセサイザーへと進化しています。
特にエフェクター業界などはクローン全盛で、あるメーカーがライバルメーカーのクローンを出したり混迷を深めている中で、メーカーごとにプラスアルファする部分がその機材の個性になっていたりします。
SE-02もMinimoogとは違う部分が強烈な個性に。
完全アナログ設計という点もBoutiqueシリーズとしては異質。
モジュラー機材などもそうですが、最近のローランドは闇雲に社内で新たなアナログ機材の開発を行わず、外部のノウハウがあるメーカーと一緒に開発を行っているようです。
「もちろん我々だけでも出来ないことはなかったと思うのですが、自分たちだけでやったら必ず間違いをおかしてしまったと思うんです。Eurorackという規格が出来て、けっこうな年月が経っているので、そっちの世界の人ならではの使い方やマナーというのが絶対にある。我々だけでやって、モジュラーのディープな世界にしっかり届くものが出来るのかというのが疑問だったんです。そっちの世界に長けた人とパートナーシップを組んでやるのがいいんじゃないかと。」
参考(製品開発ストーリー #6:ローランド AIRA Modular 〜 ローランドが10種類のモジュールを引っさげ、Eurorackの世界に本格参入! 〜 / ICON)
http://icon.jp/archives/10379
MinimoogのクローンとしてはArturiaなどからソフトシンセがリリースされていますが、SE-02でも作ろうと思えばMinimoogのような音作りは得意です。
Minimoogに存在するパラメータは網羅されていますし、エンヴェロープジェネレーターもリリースとディケイが一緒になるMoog式です。
3オシレーターとフィルターという構成もMinimoogと同じですが、フィルターの質感はMoogとはちょっと違うは違います。
SE-02も中身的にはトランジスタラダーフィルターだそうです。
しかし昨今のアナログシンセの安定性はMoog Mother-32もそうですが、デジタルかと思うほどの次元で、チューニングが狂いやすいなどは全然なく、波形も数式で描いたかのごとく余分な倍音やノイズなどが混入していない感じです。
アナログシンセに不安定さを求めている人は肩透かしを食らうと思います。
ユーロラックをいろいろいじって思いましたが、デジタルオシレーターというのも素晴らしいものです。
低音の音の太さはアナログというよりデジタルのほうが多くの場合波形が忠実でSNもいいですが、SE-02はかなりいい線いってます。
でもそのいい線というのがデジタル嫌いな人にとっては音が良すぎて味がないみたいな反応になるのかもしれません。
これはAbleton上でLFMWを使ってLFOを生成し、USB経由でSE-02を制御する実験です。
しかし、SE-02の魅力はオシレーターでもフィルターでもなく、なんといってもオリジナルのMinimoogには存在しない魔改造箇所の3種類のクロスモジュレーションとLFOではないでしょうか。
XMODパネルではOSC2でFMの周波数でフィルターにモジュレーションをかけるFilter FMも実現可能です。
またOSC3からOSC2へのFM変調も可能。
PWMもOSC3をLFOではなくオシレーターの周波数で利用すれば通常のPWMとは違ったかけかたが可能になっています。
ここの3つのつまみで決定的に強烈な音色を作れます。
他にはMixer段にFeedbackも搭載されていて、波系が入力部に戻されることで音が歪みます。これもうまく使うとザラっとしたEDM以降のゴリゴリのベースサウンドを作ることができます。
LFOはピッチとフィルターにかけることができますが、1周期だけ鳴らしたり、鍵盤をノート音するごとに位相がリセットされたりするような設定も可能です。
このあたりのmoogにない機能追加があるだけでレトロなアナログシンセサイザーのリバイバルに止まらない、現代的なうねるようなモジュレーションをかけることができ、最近のソフトシンセのような複雑な時間的音色変化をともなうベースの音が簡単に作れるようになっています。
LFOはDAWからテンポシンクしながらかけられるようなスイッチも搭載されていますし、DAW側からはUSB端子を経由して24bit/96khzでダイレクトに録音ができます。当然MIDIもDAWから送ったものをUSB経由で受信できます。
コンピューターとの親和性も至れり尽くせりでそこらのアナログモデリングMinimoogプラグインを使うのの代用としてかなりいいと思います。
もちろんアナログなので、全パラメータにつまみからアクセス可能で
汎用MIDIコントローラーを使ってリアルタイムにパラメーターを制御しながら音楽をプレイするのとは違う専用のインターフェイスの魅力というのがあります。
MinimoogのクローンシンセとしてはNIのMonarkなども最近ありますが、SE-02のほうがパラメーターが多く、さらに色々な音が作れます。
ライブやリアルタイムコントロールが必要な即興をするミュージシャンにはサイズも小型だしもってこいです。SE-02。
—–Roland公式サイトから引用—–
https://www.roland.com/jp/news/0749/
昨今の音楽シーンでは、1980年代に活躍したアナログ・シンセサイザーの分厚く個性的なサウンドが再評価され、往年の名機で演奏や音楽制作を楽しみたいというニーズが多く聞かれます。ローランドは、シンセサイザー愛好家に向け、2015年にコンパクト・サイズで本格的なサウンドを搭載した「Roland Boutiqueシリーズ」を発売。「JUPITER-8」など1980年代に発売したローランドを代表するアナログ・シンセサイザーのサウンドを、独自のデジタル・モデリング技術で復刻しました。翌2016年にはラインアップを拡充し、現在のダンスミュージックで欠かすことのできないサウンドを生み出す「TR-909」や「TB-303」などを忠実に再現したモデルを発表。「Roland Boutiqueシリーズ」は、手頃な価格でビンテージ・シンセサイザーの音を楽しめる楽器として好評いただいています。
新製品『SE-02』は、同シリーズの新たなライン「Roland Boutique Designerシリーズ」として発売する、モノフォニック・アナログ・シンセサイザーです。『SE-02』は、アナログ・シンセサイザーで世界的に定評のある米国メーカーStudio Electronics社と初めて共同開発。アナログ・シンセサイザーのサウンド・エンジン(音源)をStudio Electronics社が、その他のデジタル制御部分および機構/生産設計をローランドが担当し、両社の最新技術を結集しました。「Roland Boutiqueシリーズ」共通であるA4サイズ半分程度の小型ボディにあらゆる機能を集約しており、つまみで操作しながら本格的なアナログ・シンセの音づくりが気軽に楽しめます。専用の小型鍵盤ユニット「K-25m」を使えば、卓上サイズの鍵盤付きシンセサイザーとして演奏可能。持ち運びに便利で、ヒップホップ、R&B、ダンスミュージックなどのライブ演奏にもご使用いただけます。
特長
・コンパクト・サイズながら本格サウンドを搭載する「Roland Boutique」シリーズ初のアナログ・シンセサイザー
・Studio Electronics社との共同開発により、アナログ・シンセサイザー特有の個性的なサウンドを実現
・ステップ・シーケンサーやMIDI/USB入出力など、現代の音楽制作に欠かせない実用性の高い最新機能を搭載
『SE-02』の主な特長
『SE-02』は、ビンテージ・アナログ・シンセサイザーならではの本格的なサウンドと音づくりの魅力を卓上サイズの一台に集約。Rolandの最新技術により、その小型化が実現しました。
『SE-02』は、アナログ・シンセサイザーが持つVCO(Voltage Controlled Oscillator)、クロス・モジュレーション、24dB/octのフィルターなど、高度なシンセ・エンジンを搭載しています。
音のキャラクターを特徴づけるオシレーター・セクションは、3つのVCOで構成されており、各オシレーターの波形を三角波、のこぎり波、矩形波など7種類から選択できます。また、「オシレーター・シンク」も装備しており、複雑な波形を作り出すことによって、自由度が高く重厚なサウンドをつくることができます。クロス・モジュレーション・セクションは、3種類のつまみで自由な音色変化が可能です。音の明るさや太さを決めるフィルター・セクションは、急峻な減衰特性を持つ24dB/octのローパス・フィルターで構成。ピッチや音量を揺らして音に周期的な変化(うねり)をつけるLFO(Low Frequency Oscillator)セクションは、サンプル&ホールドも備えた9種類の波形を選択できます。
『SE-02』には、厳選された384のプリセット・サウンドを搭載。ビンテージサウンドから最新のサウンドまで幅広い音づくりが可能です。また、128のプログラム・メモリーを備えており、プリセット・サウンドを変更したり、新しいサウンドを作成した際、パネル設定を記憶させることができます。
現代の音楽制作に欠かせない実用性の高い最新機能を搭載
『SE-02』は、ステップ・シーケンサー、豊富な入出力端子、プログラム・メモリー、ディレイ・エフェクトなど、現在の音楽制作に必要な機能も搭載。音づくりや演奏表現の幅がより広がります。
演奏データを記録/自動演奏できるステップ・シーケンサー:16ステップ・シーケンサーを搭載。最大16ステップにノートを入力して、ループ再生することができます。MIDI同期信号に対応しており、外部のMIDI機器との同期が可能です。また、ステップごとに、音の長さを制御するゲート・タイム、ステップ間のピッチ変化を滑らかにするグライドの設定も可能です。一つのパターン・シーケンスには、パッチ(音色)・ナンバー、シャッフル、スケールを記憶することができ、128のパターンを記憶することが可能。最大16パターンで構成されるソングは、本体に16個まで記憶できます。
ビンテージ・アナログ・シンセから最新の機器まで接続できる豊富な入出力端子:市販のMIDIケーブルでMIDI機器を接続し、『SE-02』を演奏することができます。また、『SE-02』はトリガー端子やCVインプット端子を備えているので、トリガー・アウト端子を持ったリズムマシンや他のビンテージ・シンセサイザーなどと接続することができます。市販のUSBケーブルでパソコンに接続し、USB MIDIとUSBオーディオの情報をやりとりすることもできます。
音づくりの幅がさらに広がるディレイ・エフェクト:シンセサイザー・サウンド用に設計されたディレイ・エフェクター(残響効果)を搭載しており、立体感のある音づくりを楽しめます。
Studio Electronics社について
米国の老舗アナログ・シンセサイザー・メーカー。「Premium Quality Analog」をコンセプトに、「MidiMini」、「ATC-1」、「Omega 8」、「CODE 8」、「Boomstar」、「Tonestar」など数々のアナログ・シンセサイザーを開発。中でも「SE-1」は、設立当時のプログラマブル・シンセサイザーの草分け的存在で、ヒップホップ、R&B、ダンスミュージックの定番として広く使われています。
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