音の空間性 / サウンドスケープ

投稿日: カテゴリー: Sound

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まだ詳しくは明かせませんが、東京大学の池上高志さん、フォトグラファーの新津保建秀さん、サウンドアーティストのevalaさんらと沖縄県竹富島にサウンドの採取に行って参りました。
録音した素材以上に非常に大きな収穫がありました。
音への意識が非常に高まりました。
意識が薄かった空間性をかなり意識するようになり、サウンドスケープの考え方が変わったと言えるでしょう。耳が開く感覚とはまさにこのことです。

これまでフィールドレコーディングをするにしても、ある特定の素材を収集するためにマイクを向けたりしていましたが、考え方が180度がらりとかわりました。これまでサウンドスケープ上のノイズと考えていた交通の音や街中のBGM、それらはすべて立体音響として捉えることができるようになりました。
渋谷の109に行ってみたら超高密度の立体音響としてサウンドスケープを捉えることができ、自分の歩行による音響空間の遷移などを確認し、毎日これまでにないサウンド体験をしております。

サウンドアート系のトレーニングでよく行われることですが、現在鳴っている音をすべて紙に書き出してみるというものがあります。これを拡張し、何の音がどの辺りからどれくらいの放射角度で鳴っているのかなど細かく意識をするようになっています。
以前は何の音混ざり合ってサウンドスケープを構成しているのかという意識も大切ですが、物体がどのように運動しているのかという部分にかなり意識が高まりました。
世の中の音源は固定されているもののほうが少ないくらいで、その多くが何らかの運動をともなっています。運動が音を発することもあれば、それらが独立しているときもあります。
しかし、全く運動なしに音が発せられる現象を探すほうが実は難しいことがわかりました。

サウンドスケープへの意識、自分で集中して新しい境地を見出したというより、グラインダーマンとの仕事を始め、2月の多くの時間を共に過ごさせていただいたevalaさんとの音に関する会話から大きな影響を受けたのだと思います。サウンド、音色のことはおろか、作曲に関しても何か新しいものを掴んだ気がします。サウンドアートと作曲は繋がらないもの、全く別の文脈の芸術と捉えられがちですが、それらが混じり合う点は必ずあるのだと思いました。

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録音に関してですが、おなじみのKorg MR-2に加え、バイノーラルマイクを導入しました。
これは空間を捉えるのにとても良い機材です。1万円弱なのでフィールドレコーディングや映像、映画をやっている人も1つは持っておくことをおすすめします。
一般的な指向性マイクはマイクを向けた方向に集音範囲が狭められますが、バイノーラルマイクは集音のフレームが無いような感覚で、空間的に面白いサウンドスケープを捉えるのにも絶好のアイテムです。

SPAT_Player

DSDのレコーディングを始めてからですが、PCMにコンバートする際にかなりハイクオリティーなフォーマットで書き出せるため、音楽系のプロジェクトは 48KHz 32bitで行うようになりました。と言っても、このファイルフォーマットでプロジェクトを作れるDAWはまだ少なく、Protools9も24bit、Logic9も24ビットまでのオーディオファイルしか扱うことができません。
CubaseとNuendoは32bit floatでのレコーディングが可能なので、これからDSDユーザーはこういったDAWにシフトしていくのでしょうか。ableton liveも32bit floatのレコーディング、書き出しが可能です。

Max/MSPは以前から32bit floatをサポートしていたものの、DSDを手に入れてから始めて32bitで音響処理をするようになったのですが、16bitとの音質の違いに驚愕しました。
もはや16bitでの制作には戻れません。とくにグラニュラーやFFT系のミクロな波動を加工、分析するような音響処理ではビットデプスは高いほうが劣化が少なく、いかにもというエフェクト感、というより劣化感を抑えることができるため音の質感がきれいになります。
元がDSDでとられたデータなのでノイズが少ないというのもあるかもしれません。
しかし、いいことづくしの32bitにも弱点があります。
それは、ファイルサイズの大きさとメモリー消費です。これがけっこう予想以上です。HDDは7200回転のものでないと同時に複数トラック録音するにはサンプルの取りこぼしが厳しいでしょう。
メモリーも簡単に不足してエラーメッセージが出ます。用途にもよりますが4GBでは少ないくらいです。
今まで当たり前のようにやっていたサンプルの再生+音響処理のようなMaxパッチが32bitを扱ったとたんに動かなかったりします。
マシンスペックに依存する箇所なので、テクノロジーの進化とともにいずれ解消するでしょう。

ともあれ、
沖縄以降、僕の生活は日常からコンピュータ作業まで確実に大きな変化をとげています。