70年代のストラトの特徴と値段が上がらない理由

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現在でこそストラトキャスターはスタンダードな設計のギターとして不動の地位を築いていますが、過去には売り上げが芳しくない時代もあり、常に栄光のギターに君臨していたわけではありませんでした。
もしジミヘンがストラトを使っていなければ、70年代は更にストラトの売り上げは落ちていたでしょう。ラージヘッドで貼りメイプル仕様のストラトの値段が上がるのは、ギターとしての機能ではなくジミヘンの影響なのです。
他にも57年のメイプルネック、アルダーボディーで黒のヴィンテージストラトの値段が高いのはこの仕様のギターをエリック・クラプトンが使用していたからです。
ギターという楽器は同じ名前でも毎年微妙にスペックが変わり、改善もあれば改悪もあり、ワインのヴィンテージのように貴重な年というものが存在します。

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昔も今もギターが売れる要因はその品質というより、スターが使っているかどうかです。実際に楽器店で仕事をしていた知り合いの話では、「ジョンフルシアンテが使用!」と書くとエフェクターでもピックでも弦でも跳ぶように売れたそうです。
つまり、その品質で商品を判断出来る本当の耳を持っている人はそう多くは無いので、何らかのお墨付きが必要なんです。
それが、ギターの場合は誰々が使っていたという実績だったりします。
90年代はESPやフェルナンデスもV系ブームと連動して沢山アーティストモデルを出していて、今よりも勢いがありました。

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ヴィンテージギター市場でも70年代のストラトの値段が上がらないのは幾つかの要因が考えられます。

・重すぎるホワイトアッシュボディー
・三点止めのネックジョイント
・人気があった60年代のストラトとは角やボディー裏のコンターのシェイプが違い、太い
・塗装がラッカーではなくポリ
・ローパワーでクリアーなピックアップ
・ラージヘッド
・ダイキャストの一体型ブリッジ

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指板はラウンドです。

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ネックの調整はブレットトラスロッドで行います。

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チューニングキーはFマークの入った独特のもの。70年代当時はこれがちゃちく感じられ、交換するのが流行していたようです。

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ストリングガイドは1,2弦と3,4弦の2つがあります。

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ピックアップセレクターは76年後半から徐々に5点になりハーフトーンが扱えるようになりました。
逆に50,60年代のストラトではハーフトーンはわざとPUセレクターを中間ポジションで止めないと出せませんでした。

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ポールピースはフラット。

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ネックの仕込み角度を変えるマイクロティルト機構がついているのが70年代ストラトの特徴です。

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ボディー裏のスプリングまわりは昔から普遍的です。

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このあたりが70年代のストラトの特徴なのですが、人気がある50年代、60年代とは音質的な違いがあるものの、何かが劣っているとすればネックジョイントと塗料くらいでしょうか。
それ以外のスペックの差は品質というより単なる個性であり、好みの問題だと思われます。
実際アッシュは60年代のアルダーより価格が高いです。

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僕は父親から引き継いだ77年のストラトを使っているのですが、これがまた異様にフレットがすり減っていて、あるときに何でこんなにフレットが平らなのか聞いてみた所、僕が生まれるよりも前に「裸のラリーズ」のギタリストに何度か貸していた時期があったそうで、戻ってきたらこんなにすり減っていたらしいのです。
いつかyoutubeとかにどんな弾きかたをしてギターが痛んだのかを確認できる映像なんかがアップされたりするんでしょうかね。ユーズドではないのですが、いろいろな歴史をくぐり抜けてきたギターのようです。

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さて、この70年代後期のストラトと50年代、60年代のスペックのストラトの優劣をつけることは非常に難しいです。
しかし、音色のバリエーションとしては重要です。特に、ハーフトーンがクリアで80年代的なクリーントーンでのカッティングは60年代のファットなストラトや50年代の枯れたストラトよりも濁りが無く、「ハイファイ」といった印象の音色を作り出すことができます。(と言ってもギターという楽器自体が音響的にかなりローファイですが)
そういった意味ではこの年代のストラトにこだわる人は絶対いると思うんです。しかし、今でも定価くらいで買えます。

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そして、このギターも改造出来る箇所は改造しています。
トレモロスプリングはraw vintageに変え、配線材はクロスワイヤーです。配線自体もデヴィッド・ギルモアのようにフロントとリアのミックストーンが出せるように、センタートーンのポットをスイッチポットに変えて、ピックガードもアルミアノダイズドピックガードに変えています。ピックアップはそのまま。
ブリッジはユニット丸ごとフェンダーUSAのスティール製のものに交換しています。
ある意味で、トラディショナルなストラトと70年代のストラトの中間的なスペックになっています。

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話は脱線しましたが、結局のところ、ギターの値段が上がらない理由はこの年代のストラトをバリバリ使用しているミュージシャンが極端に少ないからだと思います。
僕が知る限りでも70年代後期のストラトを大々的に使用しているギタリストはU2のエッジくらいです。
有名なギタリストがとりあげない限り、どんなに品質が高くてもギターの価値はなかなか上がらないんです。
FenderとVanzandtの違いはそのあたりではないでしょうか。
質という面で見ればVanzandtはむしろ今のFender以上のギターを作り出していると思います。

それでも人々がFenderを手にする理由は、「何を使うのか」ではなく「誰が使ったのか」という尺度で、ものごとを判断してしまうからではないでしょうか。それは現代人の心の問題でもあるはずです。

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