ミラーレス一眼カメラは現在のデジカメ市場の売り上げの大半をほこるそうですが、何も最新のメーカーのレンズを装着して新しい写真を作ることだけがミラーレスの魅力ではないと思います。
僕も様々な規格のレンズをマウントアダプター経由でSONYのNEXで使用しているのですが、そのメリットは選択肢が多いだけでなく、MマウントやM42は歴史があり、最近のミラーレス一眼用レンズよりもオールドレンズのほうが案外様々なボディーに搭載できるところもあります。
つまり、ボディーを乗り換えた場合にもほとんどレンズ資産は引き継げる点にあると思います。
例えばEマウントでいろいろ揃えてからキャノンに移行した場合、Eマウントレンズの活用は絶望的になるでしょう。しかし、EマウントボディーにMマウントレンズなどを装着していればこのようなことはおこりません。考え過ぎかもしれませんが、それくらいMマウント用の規格は歴史があるが故の信頼があります。
特にミラーレス一眼のボディーは日進月歩で、フルサイズセンサーのNEXが来年登場するとも言われてますし、そのときにEマウントはNEXの主流では無くなっているかもしれません。ボディーを数年で乗り換えることは避けて通れないと思います。
フルサイズセンサーにAPS-Cに特化して設計されたEマウントの現行のレンズは対応できないかもしれませんが、Mマウントのレンズであれば35mmサイズで設計されているためフルサイズセンサーでもその性能を発揮することができます。
ブログのお題ですが、ライカのズマールというレンズ(1936年製)についてです。
ズマールはライカの39mm径のLマウントというネジ式のマウントなのですが、LMリングという部品を使えばMマウントに変換できます。
そこからNEXのEマウントにアダプターで変換して使ってます。
- Leica Order No. – SUMAR (1933) SUMUS (1934) KUP or CHROM LLC – 117
- Production era – 1933-1940 < 127,950 lenses
- Variants – Rigid (ca.2000 lenses), tropical (with extra front element), collapsible, nickel, chrome, black front ring, metric and foot versions
- Lens mount – Leica Screw-thread
- Number of lenses /groups – 6 /4
- F stop range – f/2-f/12.5
- Closest focusing distance – 1 m
- Smallest object field –
- Diaphragm setting /type – 6-blade / 10-blade
- Angle of view diagonal – 45 degrees
- Filter type – A36
- Accessories – Hood: SOOMP Viewfinders: VIDOM, VIOOH, SBOOI 12015
- Materials – Nickel or chrome plated brass
- Dimensions (length x diameter) –
- Weight – 205 g /7.23 oz
- Inscription – Summar f=5cm 1:2 No1xxxxx
http://www.l-camera-forum.com/leica-wiki.en/index.php/Summar_f%3D_5_cm_1:2 から引用
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
ズマールの焦点距離は5cmでf2です。最短撮影距離は1m。
現代のレンズの多くが安くても3万円程度なのに対して、オールドレンズは一流メーカーのものであっても安いケースが多く、ズマールも運良く1万円台で購入したのですが、これがまた現代のレンズには全く無い魅力(レンズ自体のクセが強い)が満載です。
僕のズマールは1936年製の非常に古いレンズなのですが、マウントアダプター経由で現代のミラーレス一眼にもしっかり装着できます。
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
ズマールの描写は非常にソフトで、ソフトフィルターをかましているような写りです。
このことはgoogleでleica summarと画像検索すればすぐにわかります。大量のデータを通じて様々なシチュエーションで撮られたズマールの写真から特徴だけが見えてきます。それはぼんやりベールに包まれたような画像です。
その理由は傷がつきやすい柔らかいガラスをレンズに使用しているため、傷の状態から写りがソフトになってしまう場合もあるようです。僕のズマールは傷はありませんが、年代物なのでMARUMIの34mm径のモノコートのUVフィルターでレンズをガードしています。
ズマールはレンズコーティングが無いようなので、フィルターのコーティングを通すのは抵抗があるのですが大切に使いたいという気持ちのほうがどうしても勝ってしまいます。
ズマールの特徴はインスタグラムやPhotoshopの後処理で加工できるようなものとは少し違います。
むしろピントをわざと外して、ぼんやりした印象派的な写真を撮影するのに向いています。
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
ズマールの絵は雰囲気としては、つねにハマグリのお吸い物を通してものを見ているような薄い白っぽい濁りを生じます。
ズマールはボケ玉と言われるように、とにかくコントラストが淡く、逆光時にフレアやハレーションが激しく発生します。
この時代は逆光で写真撮影すること自体が避けられていたのですが、現在のほとんどのレンズは逆光でもしっかり撮れるように、レンズのコーティング技術が進歩しています。レンズを覗き込むと青かったり紫色だったりするのはコーティングの色です。
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
ズマールで撮影すると緑は最近のレンズよりも渋く写り、黒い部分が若干紫がかって写ることが多いです。
発色ははっきりしているのですがコントラストは低いです。
総じて、幻想的なやわらかいものをとらえるのに向いているような描写です。
モノクロ時代のレンズですので、当然モノクロの絵は作りやすい色のバランスです。
試したことがある人はわかると思いますが、単にカラー画像のRGBを白黒の2諧調にダウンコンバートしただけではモノクロ写真は良くなりません。
モノクロにするということは少なくとも色の面では抽象化が必要で、どの色の諧調を強調し、どの色の諧調を縮小するかで全体の明るさの濃淡の見え方は変わります。
自然に忠実などということは意味をなさないので、徹底的に自然界の色情報を使って新たな画像を作り出します。
ある意味ではカラーの世界をモノクロ写真にヴィジュアライズするようなものです。
それくらい別物だと思います。
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
合焦点はそれなりにくっきりしているのですが最近のレンズと比べるとだいぶソフトです。
絞り解放での後ボケはグルグル回るような不思議な描写になることがあります。これは逆光の状態などにもよるので、いつも発生するわけではありません。
こういったアナログ特有のボケはPhotoshopで再現するなんてことは無いと思いますが、やろうと思ったら何枚もの画像を合成したり、かなり面倒なことになります。
レンズがエフェクトになるズマールならではの味です。
このライカのオールドレンズに何を求めるかですが、多くの人は色合いだったり描写のノスタルジーだったりすると思うのですが、僕はフレアやハレーションを撮影する道具として捉えています。
人間の肉眼では確認できないオーラのようなものや、光の直進力なんかをカメラを通じてとらえたいというのがあります。
そういったものを撮影するには現代のレンズのコーティングは邪魔になるのです。
オールドレンズでむしろ逆光を狙ったときに発生するフレアやゴーストなどの予期せぬエラーが面白いです。
こういった発想もノイズやグリッチを経過したデジタル以降なのかもしれません。
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
最近はデジタル一眼でもダイナミックレンジを活かすためにローパスフィルターを取り除いたセンサーが出てきていますが、コーティングレスレンズも出てくれたら問題はすべて解決するのですが…(絶対出ないと思います)
ズマールの最短撮影距離は1mなのですが、これはレンジファインダーカメラ用のレンズの宿命です。
ところが
Hawk’s Factory製 Eマウント用 補助ヘリコイド付 Mアダプタ(ノブ付) Ver3
KIPON製.マクロ撮影可.ライカMマウントレンズ-ソニーNEX.Eマウントアダプター
上記のような、ヘリコイドがついたマウントアダプタを使うとこの最短距離を40cm程度まで縮めることが可能になります!
これはレンジファインダーカメラに装着していた時代には考えられない距離の撮影が現代になって可能になったということです。
ズマールで撮影された写真というのはどんなに近くても1mのものしかなかったのですが、ヘリコイド付きのマウントアダプターを使えばその限界を超えられます。
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
これくらい近い写真も撮影できます。
現代のデジカメの基準からしたらそれでも遠いと感じると思いますが、それまで1m離れないと撮影ができなかたことを考えると、被写体の撮影可能性は大幅に広がります。
1mというのは意外と長いです。
例えば片手に収まるサイズの小物を写そうとしても、1m離れるとかなり被写体は小さくなってしまいます。
最近のデジカメに慣れている人は1m以内の距離の撮影も頻繁にしていると思いますが、それが出来ないというデメリットは小さく無いです。
しかし、ヘリコイド付きマウントアダプターで40cmまで寄れれば、50mmレンズのズマールなら、よほどのマクロ撮影でない限り撮影に困ることは無いと思います。
動画といい、近接撮影といい、アナログのレンジファインダーカメラの時代には想定していなかった使われかたが、最近のデジタル技術を通じて発見されたというのが美しいと思います。
(Ernst Leitz Wetzlar Summar 5cm F2)
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