音の解像度、アップコンバートについて実験を行ってみました。
Cubaseに限った話ではありませんが、DAWのプロジェクト作成の際にどのサンプリング周波数、ビットレートを選択するかは迷う人が多いのではないでしょうか。
CD音源を作る際、44.1KHz / 16Bitという規格にのっとってデジタルデータを作成しなければならないことは音をやってる人はご存知だと思います。
マスタリングを独力で行う場合にはステレオの2Mix素材を元に作業を行うことになると思います。
音楽の場合、この2Mix素材は44.1KHzで準備されることが多いでしょうがそのまま44.1KHzのプロジェクトで作業するか、2Mixをもっと高解像度にアップコンバートして192KHz / 32Bit等で作業するかで折り返しノイズの量が変わり、音質も変わることがわかりました。
–ナイキストの定理–
ある音をサンプリングするとき、そのサンプリング周波数 fs の 1/2 の周波数をナイキスト周波数と言います。ナイキスト周波数を超える周波数成分は標本化した際に折り返し (エイリアシングとも言う) という現象を生じ、再生時に元の信号として忠実には再現されません。ハリー・ナイキストにより1928年に予想されたこの再現限界の定理は、ナイキストの定理と呼ばれています。
折り返しは、ぴったり鏡のような反射を伴います。SR(サンプリング周波数)44.1KHzの場合、ナイキスト周波数は22.05KHzとなり、それより高い周波数は折り返しが生じます。
例えば、23.05KHzの音を送ると22.05-(23.05-22.05) = 21.05KHzという原音とは何の倍音関係もない周波数が発生し、これがエイリアスノイズと呼ばれます。
これを防ぐためにはナイキスト周波数以上の周波数をフィルターで完全にカットする方法がとられるのが通常です。オーディオインターフェイスの入力段にも必ずこのフィルターが入っています。
しかし、cubaseではこのフィルタリングはミックスダウン時にも自動ではかからず折り返しが生じていることが以下の実験画像からもわかります。
実験は島本さんの以下の記事に触発されての内容です。
http://bit.ly/mde3c2
実験に使用したスウィープ正弦波
波形:正弦波
周波数:20Hz – 22050Hzリニア
時間:10000ms
レベル:-10dB
ビットデプス:16bit
サンプリング周波数:44100Hz
この画像は44.1KHzのスウィープ正弦波にcubase付属のDaTubeという真空管のサチュレーションを再現するディストーションをかけて倍音を付加して書き出した音のスペクトルです。ナイキスト周波数より高い周波数の音がキレイに折り返しているのがわかると思います。ナイキスト周波数の2倍、3倍の周波数では更なる折り返しが発生してスペクトルが複雑になっています。
上は44.1KHzのスウィープを48KHzのcubaseプロジェクトで開き自動アップコンバートを行い、DaTubeをかけ再び44.1KHzで書き出したものです。
上は同様のプロセスを88.2KHzのプロジェクトで行ったものです。
以上のスペクトルからも、Cubaseではプロジェクトによって素材だけでなくプラグインの処理解像度がかわることがわかります。
スペクトルの複雑さを見ると、96と88.2を比較すると88,2のほうが音に乱れが無いのかもしれません。
たとえ44.1KHzの2Mixでも192KHzにアップコンバートしてからマスタリング、編集作業を行い、最終段階でターゲットのサンプリング周波数、ビットレートにおとしてやることが原音の明瞭度を維持するためにも効果的です。スペクトルだけではわかりませんがビット数にも言えることだと思われます。
これはマスタリングに限らず全てのプラグイン処理に言えることです。プラグインの解像度はプロジェクトのサンプリング周波数、ビットレートの設定に依存してきます。
それにしても、ナイキスト周波数以上の周波数をすぱっとカットしてくれるプラグインって無いのでしょうかね。
下手にフィルタリングすると最高域に少し影響出てしまいますし。